火星のトロヤ群小惑星に、地球の月と組成が似たものを発見!

Armagh Observatory and PlanetariumのWEBページより

太陽と惑星の間で重力のバランスが取れて安定する「ラグランジュ点」と呼ばれる場所があります。惑星の公転軌道上で、その惑星の進行方向の前後60度離れたところにもラグランジュ点があります。惑星の前方のラグランジュ点をL4、後方をL5と呼びます。木星ではL4とL5にたくさんの小惑星が見つかっており、それらの小惑星は「トロヤ群小惑星」と呼ばれています。トロヤ群小惑星は少数ながら火星でも発見されています。

そのような火星のトロヤ群小惑星の中に、地球の月と組成が似ているものがあることが分かりました。研究チームはESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)に設置された分光器X-SHOOTERで、火星のL5にあるトロヤ群小惑星(101429)1998 VF31の反射スペクトルを観測しました。ハワイにあるNASA(アメリカ航空宇宙局)赤外線望遠鏡施設(IRTF)での既存の観測データと合わせて分析したところ、月のスペクトルと最もよく一致したのです。

この小惑星の起源について、研究チームでは三つの可能性を挙げています。一つは小惑星が長年にわたり太陽放射を浴びることで変化(宇宙風化)し、月のスペクトルと似た姿になったとするものです。

あるいは地球の月から飛んでいったものである可能性もあります。太陽系ができたばかりの頃は、天体衝突が頻繁に発生していました。月で起きた衝突の破片が火星軌道に到達して捕われたのかもしれません。

もう一つの可能性は、その小惑星が火星で起きた巨大衝突の破片だとするものです。(101429)1998 VF31と同じL5点にある「エウレカ族」と呼ばれる小惑星群については、数年前に火星起源説が提案されています。101429が惑星の地殻などに見られる輝石が豊富であるのに対して、エウレカ族はほぼカンラン石です。カンラン石は惑星のマントル深部にある鉱物です。なお冒頭の図で、L5での青は101429、赤やオレンジはエウレカ族を示しています。

(参照)Armagh Observatory and Planetarium