多数のダストデビル、突風で舞い上がった4平方kmもの塵。最新火星探査車が観測 | アストロピクス

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多数のダストデビル、突風で舞い上がった4平方kmもの塵。最新火星探査車が観測

NASA(アメリカ航空宇宙局)の最新の火星探査車パーサヴィアランスは、火星のジェゼロ・クレーターに着陸して探査を行っています。そのパーサヴィアランスの着陸から216火星日(火星の1日)の間に得られたデータを元に行われた、ジェゼロ・クレーターの気象に関する最新研究が発表されました。Aeolis Research社(惑星の大気と気候システムの理解を目指し4人の惑星科学者によって設立された企業)のClaire Newman氏らの研究です。

こちらは2021年7月20日(148火星日)にパーサヴィアランスがNavcam(ナビゲーションカメラ)でとらえた「ダストデビル(塵旋風)」です。ダストデビルとは、塵を巻き上げた旋風(つむじかぜ)のことで、過去に火星に着陸した探査車でも観測されたことがあります。

研究によると、火星着陸から216火星日の間に、1火星日あたり平均して少なくとも4つの旋風がパーサヴィアランスを通過、そのうちの25%以上が塵を伴うダストデビルだったとのことです。またピーク時の正午からの1時間には1つ以上が通過することがわかりました。

パーサヴィアランスが目撃したのはダストデビルだけではありません。こちらの画像のような、突風によって塵が巻き上げられる現象も216火星日の間に3度観測しました。この画像は2021年6月18日(117火星日)に最初に観測された現象をとらえたものです。このときの現象は3度のうち最大のもので、4平方kmを覆うほどの塵の雲が形成されました。4平方kmというと、東京ドーム86個分ほどの面積に相当します。

火星の大気中には、舞い上がった大量の塵が漂っています。突風による塵の巻き上げの方が規模は大きい一方、ダストデビルのほうが非常に数多く発生します。研究では両者が同程度か、突風のほうがより多く塵を巻き上げていると推定しています。「突風による塵の巻き上げはめったに発生しないと思いますが、火星大気に常に漂っている塵の大部分の原因となっている可能性があります」とNewman氏は述べています。

パーサヴィアランスから3452km離れたところに着陸したNASAのインサイト着陸機は、太陽電池パネルに塵が降り積り電力が低下しています。ダストデビルによってパネル上の塵が吹き払われない限り、まもなく観測できない状況になる可能性が高くなっています。ただインサイトではこれまでダストデビルが1つも観測されたことがなく、パーサヴィアランス付近とは対照的です。ジェゼロ・クレーターでは表面が粗く風によって塵が舞い上がりやすいなどの要因があるかもしれないとNewman氏は言います。

パーサヴィアランスは「MEDA」という装置で風向や風速、旋風や大気中の塵の観測などを行っています。ただ旋風で運ばれた塵によってMEDAの風センサーが損傷したとのことです。以前、探査車キュリオシティの風センサーが飛んでくる塵により損傷したことを受けて、パーサヴィアランスではワイヤーに追加の保護コーティングを施しました。それにもかかわらず、損傷を避けることができませんでした。ミッションチームではMEDAの風センサーが作動し続けられるように、ソフトウェアの変更をテストしているとのことです。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI

(参照)Mars Exploration Program