NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線望遠鏡などの観測により、ホットジュピターには恒星のアンチエイジング効果があるらしいことの統計的な証拠が得られたとする研究が発表されました。
恒星の非常に近くを公転し表面が高温になっている巨大ガス惑星を「ホットジュピター」と呼びます。ホットジュピターは潮汐力によって主星に影響を与え、ホットジュピターをもたない星と比べて速く自転させることになります。自転が速くなることで恒星は活発になり、一般的に星の若さに関連するX線をより多く放射するようになります。ホットジュピターによるこのような「アンチエイジング」効果は、以前から指摘されていました。
ただ星の年齢を正確に測定することは難しく、恒星の若々しさがホットジュピターの影響なのか、そもそも実際に若いのかを区別することは困難でした。
ドイツ・ポツダム天体物理学ライプニッツ研究所(AIP)のNikoleta Ilic氏らの研究チームは、一方の恒星はホットジュピターをもち、もう一方はもたない連星系に注目し観測を行いました。人間の双子のように、連星系をなす星は同時に形成されます。連星系のホットジュピターをもたない星を対象群として扱ったのです。
約30の連星系をX線で調べた結果、ホットジュピターをもつ星はもたない伴星と比べてX線で明るく活動的である傾向があることがわかりました。研究チームの一人であるAIPのMarzieh Hosseini氏は「これまでの事例でも非常に興味深いヒントがありましたが、今回はついに、惑星が主星に影響を与えその若さを保っているという統計的な証拠が得られました」と語ります。
チャンドラX線望遠鏡がとらえた実際の画像
これらの画像はチャンドラX線望遠鏡がとらえたものです。上の2枚(HD189733とWASP-77)は1つの星がホットジュピターをもつ連星系の画像で、下の2枚(HD46375とHD109749)はどちらもホットジュピターをもたない連星系の画像です。下の2つの連星系の星の1つは、より遠方を公転しているか、ホットジュピターより小さな惑星が存在しています。
上の2枚ではホットジュピターをもつ星が伴星(COMPANION)よりも明るく見えているのがわかります。WASP-77では伴星からX線が検出されていません。連星のどちらもホットジュピターをもたない下の2枚の天体では、伴星が同じ程度の明るさになっています。
Credit: Illustration: NASA/CXC/M.Weiss. X-ray: NASA/CXC/Potsdam Univ./N. Ilic et al.