小惑星ディンキネシュの衛星は、小惑星が崩れた破片から形成されたか

Image Credit: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOAO
Image Credit: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOAO

2023年11月1日、NASA(アメリカ航空宇宙局)のルーシー探査機が、小惑星帯にある小惑星ディンキネシュに最接近しました。その際に観測されたデータから、ディンキネシュが衛星「セラム」をもつ二重小惑星であること、さらにその衛星が、2つの塊がくっついたような形をした接触二重小惑星であることが判明しました。小惑星を周回する接触二重小惑星が観測されたのは初めてでした。

(参考)二重小惑星だったディンキネシュ。ルーシー探査機が観測

こちらの映像は、ルーシー探査機がディンキネシュとセラムに接近して遠ざかる際に撮影した画像をつなげたものです。

アメリカ、サウスウェスト研究所のHal Levison氏らの研究チームは、衛星がどのように形成されたのかなどについて考察した研究を発表しました。

ルーシー探査機がとらえた画像を見ると、ディンキネシュには尾根や谷があることがわかります。

研究チームは、ディンキネシュの高速回転により、小惑星の一部が壊れて破片が宇宙空間に放出されたと考えています。破片が分離したところが谷となり、放出された破片の一部がディンキネシュに降り注いで尾根を形成。また、破片の一部が集まって衛星を形成した可能性があるとしています。

ディンキネシュがもし流動的な砂の山のようなものであれば、砂の粒子は少しずつ赤道に向かって移動し、回転が速くなるにつれて宇宙空間へ飛び散っていたと考えられます。しかしディンキネシュはもっと強度が高く、遠心力によって蓄積した応力が突然解放されて崩れ、破片となったと研究チームは見ています。

ルーシー探査機は、木星のトロヤ群小惑星の観測を目指し、2021年10月に打ち上げられました。2022年10月に地球でフライバイを行ったあと、2023年11月にディンキネシュに接近しました。

ルーシー探査機は2024年12月に、いったん地球へ戻りそこで2回目のフライバイを行い、その後2025年4月には小惑星帯にある小惑星ドナルド・ジョハンソンに接近します。そして2027年以降に、いよいよ木星のトロヤ群小惑星の観測をスタートします。

(参照)NASAUniversity of Maryland