この画像の背景は銀河群HCG 068を可視光でとらえたもので、枠内は矮小銀河Mrk 462から検出されたX線の画像です。X線画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線望遠鏡によって撮影されました。そのチャンドラの観測でMrk 462には、太陽の約20万倍の質量をもつ、比較的小さな超巨大ブラックホールがあることが分かりました。
Mrk 462にある星の数は数億個で、天の川銀河の100分の1程度しかありません。銀河中心の超巨大ブラックホールを見つけるには、ブラックホールの周囲の星の動きを観測する方法がありますが、矮小銀河では暗すぎるために発見するのが困難です。ブラックホールを見つけるためのもう一つの方法は、ブラックホール付近から出てくるX線をとらえることです。
チャンドラによるX線の観測データから、Mrk 462のブラックホールはガスと塵に埋もれていることが分かりました。今回の発見は、矮小銀河に深く埋もれた超巨大ブラックホールが発見された初めての例となります。塵に埋もれたブラックホールは、そうではないものに比べて発見しにくくなります。Mrk 462での発見は、同じようなブラックホールをもつ矮小銀河がより多く存在しているということなのかもしれません。
これまでの研究から、ブラックホールは宇宙誕生から10億年も経たないうちに、太陽質量の10億倍に成長できることが分かっています。ただ、なぜ短期間のうちにそれほど大きく成長できたのかについては、よく分かっていません。Mrk 462のような矮小銀河の多くに超巨大ブラックホールが存在しているかどうかは、宇宙初期のブラックホールがどのように成長したのかという謎を解決することにもつながる可能性があるとのことです。
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/Dartmouth Coll./J. Parker & R. Hickox; Optical/IR: Pan-STARRS