ビッグバンの直後には星や銀河は存在せず、水素やヘリウムなどの軽い元素の原子だけが存在していました。やがてそれらのガスから星が生まれます。しかしそのような第1世代の星(「種族IIIの星」ともいわれます)が、いつ、どうやって形成されたのかはよく分かっていません。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のRachana Bhatawdekar氏らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡で銀河団MACS J0416(冒頭の画像)とそのパラレル・フィールド(銀河団に近い領域の空)の観測を行いました。ハッブルの観測結果と、スピッツァー宇宙望遠鏡、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)の観測データを組み合わせて、ビッグバンから5億〜10億年後の宇宙を詳しく調べたのです。
しかしその時期の宇宙に、第1世代の星の証拠を見出すことはできませんでした。この結果は、従来考えられていたよりもずっと早い時期に銀河が誕生したことを示しています。また、ハッブル宇宙望遠鏡で観測できる時代より早い時期に、第1世代の星や銀河の形成が起きていたことを示唆しています。
今回の研究は、ハッブル宇宙望遠鏡の「ハッブル・フロンティア・フィールド」プログラムの一環として行われました。このプログラムでは、2012年から17年にかけて6つの銀河団を観測し、銀河団の重力レンズ効果によって従来の観測よりも10〜100倍暗い銀河が探索されました。銀河団MACS J0416は、その6つの銀河団のうちの1つです。
Image Credit: NASA, ESA, and M. Montes (University of New South Wales, Sydney, Australia)
https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2020/06/Hubble_makes_surprising_find_in_the_early_Universe