木星氷衛星探査計画「JUICE」 打ち上げ後の予定は? 何を探査する? | アストロピクス

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木星氷衛星探査計画「JUICE」 打ち上げ後の予定は? 何を探査する?

JUICEの想像図。Image Credit: spacecraft: ESA/ATG medialab; Jupiter: NASA/ESA/J. Nichols (University of Leicester); Ganymede: NASA/JPL; Io: NASA/JPL/University of Arizona; Callisto and Europa: NASA/JPL/DLR
JUICEの想像図。Image Credit: spacecraft: ESA/ATG medialab; Jupiter: NASA/ESA/J. Nichols (University of Leicester); Ganymede: NASA/JPL; Io: NASA/JPL/University of Arizona; Callisto and Europa: NASA/JPL/DLR

大型木星氷衛星探査計画JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)が、2023年4月13日に打ち上げられる予定です。JUICEは木星および、氷衛星であるエウロパ、ガニメデ、カリストを詳しく調べます。2031年に木星の周回軌道に投入され、カリストやエウロパなどのフライバイ観測を行った後、2034年にはガニメデの周回軌道に入る予定になっています。JUICEはESA(ヨーロッパ宇宙機関)が主導し、日本やアメリカ、イスラエルが参加する、史上最大級の国際太陽系探査計画です。

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打ち上げからミッション終了までの予定

この映像はESAが公開したもので、JUICEの打ち上げからミッション終了までがまとめられています(Credit: ESA/Lightcurve Films/R. Andres)。以下、この映像に沿ってJUICEの予定を紹介しましょう。

JUICEは2023年4月13日、フランス領ギアナのクールーにある宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられます。2024年8月に地球-月系、2025年8月に金星、2026年9月と29年1月に地球でフライバイを行い、それぞれの天体の重力を利用して速度を変えます。2024年8月は、月でのフライバイのわずか1日半後に地球でのフライバイを行います。LEGA(Lunar-Earth gravity assist)と呼ばれる、このような地球-月系のフライバイは世界初となります。

2029年1月の地球フライバイのようす(映像より)
2029年1月の地球フライバイのようす(映像より)

最後の地球フライバイから2年半後の2031年7月に木星系へ到達すると、木星最大の衛星ガニメデの重力を利用して木星の周回軌道に入ります。周回軌道に入る半年前から科学ミッションを開始、木星に接近しながら観測を行うことになっています。軌道投入後は4年間かけて木星と3つの衛星(ガニメデ、カリスト、エウロパ)の詳細な観測を行います。

カリストへの一連のフライバイによりJUICEの軌道の傾きを変え、木星の極域や高緯度地域の環境を調査できるようにします。またガニメデやカリスとでの一連のフライバイによって軌道を変えていき、2034年12月にはガニメデを周回する軌道に入ります。地球以外の惑星の衛星を周回するのはJUICEが初めてです。最終的には高度500kmの円軌道に投入されます。2035年9月にミッションを完了する予定になっています。

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衛星の地下海や生命存在の可能性を探る

木星には、「ガリレオ衛星」とも呼ばれるイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つの大きな衛星があります。これらのうちエウロパ、ガニメデ、カリストには地下に海があると考えられています。それらの衛星の地下海の環境や、生命が存在しうるのかどうかを探ることがJUICEの目的の1つです。

木星探査機ガリレオがとらえたエウロパ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute
木星探査機ガリレオがとらえたエウロパ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute

エウロパの氷の地殻に覆われた表面は若くて流動しており、地下には海(内部海)が存在すると見られています。エウロパでは、地下の海水が水蒸気となって宇宙へ噴き出すプルームも発見されています。JUICEはエウロパでのフライバイを2回予定しており、最接近距離は400km。内部海や氷の組成、地質活動の有無を調べることになっています。

木星探査機ジュノーがとらえたガニメデ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kalleheikki Kannisto © CC BY
木星探査機ジュノーがとらえたガニメデ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kalleheikki Kannisto © CC BY

ガニメデの表面には、非常に長い期間にわたる地質学的な記録が存在してると見られています。またガニメデには、地球と同じような磁場が存在しています。JUICEはガニメデで12回のフライバイを予定しており、2034年には周回軌道にも入る予定です。フライバイでは400kmまで最接近、周回軌道投入後は500kmの円軌道で周回しますが、可能であれば200kmまで接近する予定です。内部海の有無やその組成、地質活動史、磁場の変動や成因などを調べることになっています。

木星探査機ガリレオがとらえたカリスト。Image Credit: NASA/JPL/DLR
木星探査機ガリレオがとらえたカリスト。Image Credit: NASA/JPL/DLR

カリストの表面は太陽系で最も古く、クレーターが非常に多い衛星です。表面は地質的に活動しておらず、初期の木星系の名残をとどめている可能性があります。JUICEはカリストでは21回のフライバイを予定しており、最接近時の距離は200km。氷の組成や内部状態などを調べ、木星形成当時の情報を取得します。

なお火山活動が太陽系で最も活発とされる衛星イオに関しては、接近しての観測は行わないものの、木星を周回しながら火山活動やプラズマ現象の観測が行われる予定になっています。

木星は半径が地球の約11倍、質量は地球の約300倍もある太陽系最大の巨大ガス惑星です。巨大なこの木星が誕生したことで、地球も誕生し、海や大気の成分も地球へもたらされたと考えられています。JUICEは、木星がいつどうやって形成されたのかという謎にも迫ります。

また木星の表面には、東西方向に流れるジェット気流や、あちらこちらにみられる巨大な渦があります。木星には太陽系で最も強力な磁場も存在しています。JUICEは木星の大気組成やその運動、木星の磁場、周辺のプラズマ環境、木星とガリレオ衛星との相互作用なども調べることになっています。

(参照)ESAJUICE-JAPAN - 木星氷衛星探査計画 ガニメデ周回衛星