DART衝突により小惑星から弾き飛ばされた多数の岩石を発見 ハッブル宇宙望遠鏡が観測 | アストロピクス

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DART衝突により小惑星から弾き飛ばされた多数の岩石を発見 ハッブル宇宙望遠鏡が観測

ハッブル宇宙望遠鏡が2022年12月19日に撮影した小惑星ディモルフォス周辺。小惑星から右上方向に塵の尾が伸びています。Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA)
ハッブル宇宙望遠鏡が2022年12月19日に撮影した小惑星ディモルフォス周辺。小惑星から右上方向に塵の尾が伸びています。Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA)

2022年9月26日、NASA(アメリカ航空宇宙局)は探査機DARTを小惑星ディモルフォスに衝突させ、その軌道をわずかに変えることに成功しました。ディモルフォスは、小惑星ディディモスのまわりをまわる小惑星です。

白い円は、弾き飛ばされた岩石の位置を示しています。Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA)
白い円は、弾き飛ばされた岩石の位置を示しています。Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA)

DARTの衝突時にディモルフォスから弾き飛ばされたとみられる37個の岩石が、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって発見されました。岩の大きさ1mから6.7mで、時速約1kmでディモルフォスから遠ざかっています。Hubblesiteによると、これはゾウガメの移動速度とほぼ同じとのことです。検出された岩石の合計の質量は、ディモルフォスの質量の約0.1%になります。

DARTの衝突2秒前に撮影されたディモルフォスの表面。多くの岩が見られます。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL
DARTの衝突2秒前に撮影されたディモルフォスの表面。多くの岩が見られます。Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL

これらの岩石は、衝突によって砕け散った小惑星の破片ではなく、もともと小惑星の表面にあった岩石が飛び散ったものと見られています。ハッブル望遠鏡を使い小惑星の変化を追跡しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校の惑星科学者デービッド・ジューイット(David Jewitt)氏は、DARTの衝突によって小惑星表面の岩石の2%が吹き飛ばされたと推定しています。

ディモルフォスは、かつてディディモスから放出された物質をもとに形成された可能性があります。物質を放出したのは、当時のディディモスの自転が速すぎた、あるいは別の天体が衝突したなど、いくつかの原因が考えらるようです。

放出された物質はディディモスの周囲でリングを形成し、やがて重力によって合体してディモルフォスが形成されました。ディモルフォスは岩石がゆるく集まって結合したもの(このような天体は「ラブルパイル天体」と呼ばれます)で、内部は固まっているわけではなくブドウの房のような構造になっています。

岩石がどのようにしてディモルフォス表面から弾き飛ばされたのかはわかっていません。ジューイット氏は、今後の観測によって岩石の正確な軌道を求めることができれば、小惑星からどの方向に弾き飛ばされたのかがわかるだろうと語っています。

(参考記事)探査機DART、小惑星への衝突成功!

(参照)HubblesiteESA/Hubble