冥王星の表面にはハート形の模様が存在しています。このハート模様は、冥王星の発見者にちなんで「トンボー領域」と呼ばれています。トンボー領域の西半分は、「スプートニク平原」と呼ばれる1200×2000kmもの広大な平原になっています。スプートニク平原は周囲より標高が3〜4km低い巨大な盆地になっており、主に窒素の氷で覆われ明るく見えています。
スイスのベルン大学とアメリカのアリゾナ大学の研究チームは、スプートニク平原がどのようにして形成されたのかについての研究を行いました。スプートニク平原は衝突現象によって形成されたとみられていますが、そのやや細長い形は正面衝突ではなく、天体が斜めから衝突したことを示唆しています。
研究チームは冥王星と衝突天体の組成、衝突天体の速度や角度などを変化させながら衝突のシミュレーションを実施。その結果、直径約700kmの天体が斜めから比較的低速で衝突することで、スプートニク平原のような形の構造が形成されることがわかったとしています。なお冥王星の直径は2376kmです。
冥王星の核は非常に低温なので、衝突の熱にもかかわらず固いまま残り溶けませんでした。そして衝突の角度と低速度の関係で、衝突天体の核は冥王星の核の中まで沈むことはなく、冥王星の核の上に残骸として残ったと研究チームは考えています。
冥王星の地下に海はないかもしれない
スプートニク平原のような巨大な盆地は、他の場所とくらべて物質が少ないため重力が弱くなります。そのような場合、時間とともに盆地が極方向に向かうように、天体がゆっくりと回転すると考えられています。しかし冥王星ではスプートニク平原は赤道付近にあります。
そのことを説明するため考えられたのが、スプートニク平原の地下にある液体の水の海です。液体の水は氷より密度が高いので、分厚い海と、その上に薄い氷の地殻があれば、スプートニク平原が赤道付近にあることを説明できると考えられているのです。
ただ今回のシミュレーションによれば、冥王星の原始マントルが衝突によって掘り返され、衝突天体の核の物質が冥王星の核の上に残存することで、海がなくてもスプートニク平原が赤道付近にあることを説明できるとしています。海があるとしても非常に浅いものとのことです。
(参考記事)
2015年7月、冥王星が初めて間近から観測された
冥王星には形成当初から地下海が存在していた!?
冥王星の氷の大氷原「スプートニク平原」