ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたこの画像の中央には、ほとんどが明るい楕円銀河からなる巨大な銀河団が存在しています。莫大な質量をもつ「eMACS J1823.1+7822」と呼ばれるその銀河団は、「重力レンズ効果」によって奥にある銀河の像をゆがめて弧状に引き伸ばしています。重力レンズとは、銀河団など大きな質量をもつ天体の周囲で空間がゆがみ、光の経路を曲げてしまう現象です。
この銀河団は、りゅう座の方向、約90億光年の距離に位置しています。画像には、この銀河団を取り囲むように多くの銀河が映っており、また「回折スパイク」と呼ばれる放射状に伸びる光の筋を伴った前景の星がところどころに映っています。回折スパイクは自然現象ではなく、望遠鏡の構造に由来するものです。
画像はハッブル宇宙望遠鏡のACS(掃天観測用高性能カメラ)とWFC3(広視野カメラ3)で撮影されたデータを組み合わせたものです。重力レンズ効果の強さを測定して、銀河団内のダークマター(暗黒物質)の分布を調べるための調査の一環で撮影されました。2023年5月8日に、ハッブル宇宙望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として公開された画像です。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling
(参照)ESA/Hubble