ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の太陽系外惑星観測衛星ケオプス(Cheops)による観測から、ちょうこくしつ座の方向、約200光年の距離にあるTOI-178という惑星系には少なくとも6個の惑星があることが分かりました。また、それら6個のうち最も内側のものを除いた5個の惑星が、リズミカルな関係で恒星の周りをまわっていることも明らかになりました。スイスのジュネーブ大学/ベルン大学のAdrien Leleu氏らによる研究成果です。
研究によるとTOI-178の惑星の公転周期は、内側から順に1.91日、3.24日、6.56日、9.96日、15.23日、20.71日となっており、最も内側の惑星を除く5個の惑星の公転周期の比は2:4:6:9:12となっています。このように公転周期が簡単な整数比になることを軌道共鳴といいます。例えば木星の衛星イオ、エウロパ、ガニメデの公転周期は1:2:4になっています。
公転周期をもとに計算すると、TOI-178の2番目の惑星が恒星を18周する間に、3番目の惑星は9周、4番目は6周、5番目は4周、一番外側は3周することになります。つまり18:9:6:4:3というパターンで公転しているのです。このことは、何周かするごとにいくつかの惑星が整列することを意味します。
下の動画(Credit: ESO/L. Calçada)では、2〜5番目の惑星が3時と9時の方向に来たときに音が鳴ります。周期的にいくつかの惑星が整列して音が重なり和音を奏でています。
研究チームは惑星の密度(大きさと質量)を調べるため、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)など地上望遠鏡での観測データをケオプスのデータと合わせて検討しました。
軌道共鳴が見られる惑星系では、恒星から遠ざかるにつれて惑星の密度が徐々に低下していくとLeleu氏はいいます。しかしTOI-178では、高密度の地球型惑星の隣にミニ木星のような非常に密度の低い惑星があり、その隣には海王星に似た惑星があります。このような並び方は予想外だったとのことです。
巨大衝突のような破局的なイベントによって、惑星の密度が大きく変動した可能性はあります。ただそのようなことが起きたとしたら公転周期がこれほど調和の取れたものにはなっていないだろうと見られます。TOI-178の惑星のリズミカルな動きは「この惑星系が誕生して以来、穏やかに進化してきたことを物語っています」と共同研究者であるベルン大学のYann Alibert氏は語ります。
「リズミカルな軌道上の運動と無秩序な密度のコントラストは、惑星系の形成と進化についての理解と相容れないものです」とLeleu氏。研究チームでは今後も研究を続けていく予定です。
Image Credit: ESA