がか座の方向、5億7000万光年以上の距離にある活動銀河ESO 253-3の中心付近で、約114日ごとに一定の周期で増光する現象が発生していることが、アメリカ、ハワイ大学のAnna Payne氏らの研究チームによって発見されました。
ESO 253-3での増光現象は、超新星全天自動サーベイ「All-Sky Automated Survey for Supernovae(ASAS-SN)」によって2014年11月14日に最初に検出され、「ASASSN-14ko」と名づけられました。ASASSN-14koは当初、超新星の可能性が高いと見られていました。
それから6年後、Payne氏は既知の活動銀河のASAS-SNデータを調べていたところ、ESO 253-3が約114日の一定の間隔で増光を繰り返していることに気づきました。それぞれの増光現象は、約5日で明るさのピークに達し、その後は徐々に暗くなっていきます。
研究チームはESO 253-3が2020年5月17日に再び増光すると予測し、さまざまな地上施設や観測衛星で共同観測を行ったところ、予測通りに増光が観測されました。研究チームはその後、9月7日と12月20日の増光も予測・観測しました。研究チームはまた、系外惑星探査衛星TESSのデータを使って2018年11月7日に発生した増光現象を詳細に調べました。
さまざまな観測データから、研究チームはESO 253-3での増光現象の原因として3つの可能性を考えました。
一つは銀河中心を周回する二つの超巨大ブラックホールの円盤どうしの相互作用による可能性です。ESO 253-3には二つの超巨大ブラックホールが存在していることが示唆されています。ただ二つのブラックホールの距離が、増光の頻度を説明できるほど接近していません。
もう一つはブラックホールの周りを傾いた斜めの軌道で公転する恒星が、ブラックホール周囲の円盤を通過する可能性です。ただこの場合、増光が非対称な形になると予想されますが、実際にESO 253-3で発生する増光現象は全て同じ形をしています。
研究チームが最も可能性が高いと考えているのは潮汐破壊現象によるとするシナリオです。恒星がブラックホールに近づきすぎたときに、潮汐力によって引き裂かれた恒星のガスがブラックホールの降着円盤に衝突することで増光が発生しているというのです。
恒星の軌道はつぶれた楕円で、ブラックホールに最も近い点を約114日ごとに通過するたびに、潮汐破壊現象が起きて増光します。恒星は増光のたびに木星の3倍程度のガスを失っていると見られます。ただ恒星の質量が不明なため、周期的な増光現象がいつまで続くのかは分かりません。
研究チームは今後も予測される増光の観測を続ける予定とのことです。
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
(参照)NASA