現在、太陽系には8つの惑星の存在が知られています。最果ての惑星は太陽から約30天文単位(※)離れた海王星です。その海王星の外側に、さらにもう1つ惑星があるのではないかとする仮説があり、その惑星は「プラネット・ナイン」と呼ばれています。
プラネット・ナインに関するアイデアの1つに、プラネット・ナインが地球の5〜10倍の質量を持つグレープフルーツほどの大きさのブラックホールではなないかとするものがあります。
アメリカ、ハーバード大学教授のAvi Loeb氏と学部生のAmir Siraj氏は、プラネット・ナインがブラックホールである場合、彗星がブラックホールに衝突したときに出る光をたよりに、現在建設中の望遠鏡によってブラックホールを発見できることを示唆する研究を発表しました。
現在、南米チリでシモニー・サーベイ望遠鏡(大型シノプティック・サーベイ望遠鏡)の建設が進められています。ベラ・ルービン天文台(VRO)が運用するシモニー・サーベイ望遠鏡は、一度に非常に広い範囲を観測できる望遠鏡で、天文台のある場所から見える全天を3夜で観測することができます。
VROではシモニー・サーベイ望遠鏡の完成後、「ルービン天文台による時空間レガシーサーベイ(Rubin Observatory Legacy Survey of Space and Time: LSST)」という観測計画を予定しています。これは10年間にわたり全天サーベイを繰り返し行い、宇宙の構造と進化について調べようという計画です。シモニー・サーベイ望遠鏡は2020年にファーストライト、2023年から本格的なサーベイ観測を始める予定です。
ところで、太陽から10万天文単位ほど離れたところには「オールトの雲」が存在すると考えられています。オールトの雲とは、小天体が球殻状に集まっている場所で、長周期彗星の故郷とみられている領域です。
オールトの雲から太陽方向へ小天体がやってくる際、ブラックホール(=プラネット・ナイン)に接近する可能性があります。小天体がブラックホールの重力にとらえられて落ちていく際には光が発生します。その光を検出できる感度がLSSTにはあるとLoeb氏らはみています。Loeb氏らは太陽系外縁部での小天体のブラックホールへの衝突率や、LSSTが光を検出すると予想される割合などを計算し、広視野で何度も全天サーベイを行うLSSTならば、そのような光を検出できると考えたのです。
(※)天文単位は地球と太陽の間の平均距離をもとに決められた距離の単位で、1天文単位は約1億5000万kmです。