ハッブルが観測した奇妙な系外惑星は「プラネット・ナイン」のような天体か!?

太陽系外惑星HD106906 bの想像図。Credit: NASA, ESA, M. Kornmesser (ESA/Hubble)

太陽系には水星から海王星まで8個の惑星が知られています。ただ海王星の外側に「プラネット・ナイン(第9惑星)」が存在する可能性があり、その探索が続けられています。そのようなプラネット・ナインが、太陽系の歴史の初期の頃に形成された可能性を示唆する研究が発表されました。

地球から336光年離れたところにある二重星の周りで、太陽系外惑星「HD106906 b」が2013年に発見されました。二重星は生まれて1500万年しか経っていないまだ若い恒星です(太陽系の誕生は約46億年前)。HD106906 bは、二重星から730天文単位以上離れた場所に存在し、1万5000年かけて公転しています。ハッブル宇宙望遠鏡の観測からHD106906 bは、二重星を取り囲むデブリ円盤の外側で大きく傾いた細長い楕円軌道を持っていることが分かりました。

HD106906 bはなぜそのような奇妙な軌道を公転するようになったのでしょうか。一般的な理論では、HD106906 bはもともと約3天文単位という二重星から非常に近いところで形成されたとされます。形成された惑星はガス円盤の抵抗のため二重星に向かって内側へ移動していきます。その後、二重星の重力の影響で惑星の軌道が変わり星間空間へと飛び出していきそうになりました。その際、近くを通過した別の恒星が、惑星の軌道を安定させ、飛び出すのを防いだとみられます。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の位置天文衛星ガイアの観測から、近くを通過した候補となる恒星が特定されています。

HD106906 bに関するこのようなシナリオは、太陽系のプラネット・ナインが海王星以遠のカイパーベルトよりはるか遠くまで到達した原因となったものに似ている点がいくつかあります。プラネット・ナインは太陽系の内側で形成され、木星との相互作用で外へと追いやられた可能性があります。その際に通過する恒星がプラネット・ナインの軌道を安定させたのかもしれません。二重星と系外惑星HD106906 bは、46億年前の太陽系で起きたことを垣間見せてくれているのかもしれません。

「プラネット・ナインは検出されていませんが、その軌道は太陽系の外縁部にあるさまざまな天体への影響に基づいて推測できます」と研究チームの一人Robert De Rosa氏は言います。「このことは、太陽系外縁天体で私たちが観測していることの原因が本当に惑星であるなら、プラネット・ナインが他の惑星たちの軌道面に対してい傾いて細長い軌道を持っているはずだということを示唆しています」

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したHD106906 bの画像。中心星に対してデブリ円盤は非対称になっています。これはHD106906 bの影響によると見られています。Credit: NASA, ESA, M. Nguyen (University of California, Berkeley), R. De Rosa (European Southern Observatory), and P. Kalas (University of California, Berkeley and SETI Institute)

(参照)HubblesiteESA/Hubble