エウロパ・クリッパー、スイングバイ時に火星の表面温度を試験観測 | アストロピクス

エウロパ・クリッパー、スイングバイ時に火星の表面温度を試験観測

木星の衛星エウロパの観測を目指す探査機エウロパ・クリッパーが、2025年3月1日に火星でスイングバイを行なった際に赤外線でとらえた火星の画像が公開されました。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU

火星への接近時、エウロパ・クリッパーは約18分間にわたり1秒ごとに1枚の画像を撮影し、5月5日以降、1000枚以上の画像を送信してきました。上の画像は、それらの画像を合成したものです。

1枚目のモノクロ画像では明るい部分が温度が高く、暗い部分が温度が低い領域を示しています。上部に見られる最も暗い領域は北極冠です。2枚目は色付けしたもので、赤は比較的高い温度、青は比較的低い温度を示しています。画像の赤い部分は約0℃、紫の部分はマイナス約125℃です。撮影時、太陽光がエウロパ・クリッパーの背後から照っていたため、火星面の中央付近の温度が最も高くなっています。

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木星の衛星エウロパの表面温度をマッピング

エウロパ・クリッパーの想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
エウロパ・クリッパーの想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech

エウロパ・クリッパーは木星を周回しながらエウロパに49回接近します。その際、エウロパの表面温度をマッピングします。赤外線画像は、エウロパからどれだけの熱が放射されているのかを明らかにします。比較的温かい部分は、より多くのエネルギーを放出しており最近の活動を示しています。

エウロパ表面には尾根や亀裂が縦横に走っています。エウロパの地下には海があると考えられており、表面の亀裂は海の対流によって氷が割れ、その隙間を水が上昇したことで生じたとみられています。もしそうであれば、亀裂付近は周囲よりも温度が高くなるはずです。エウロパ・クリッパーは表面温度をマッピングすることで、そういったことを調査します。

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本番へ向けた調整のため撮影が行われた

今回の火星の画像は、観測装置の一つE-THEMIS(エウロパ熱撮像システム)の調整のために撮影されました。今回撮影した画像を、既存の火星のデータから作成した画像と比べることで、E-THEMISの性能を評価し校正することが目的でした。

また、エウロパ・クリッパーのレーダーアンテナは長すぎて、打ち上げ前にクリーンルームでのテストができていませんでした。今回の火星スイングバイ時には、そのレーダー機器もテストされました。レーダーのデータは今後、数週間〜数か月かけて送られてきて分析される予定になっています。予備評価ではテストは順調だったことが示されているとのことです。

エウロパ・クリッパーは2024年10月14日に打ち上げられました。今後、2026年12月には地球でのスイングバイを予定しており、2030年4月に木星の軌道に到着することになっています。

エウロパ・クリッパーについての詳細は、次の記事をご覧ください。→「木星の衛星エウロパは生命に適した環境なのか 探査機エウロパ・クリッパー打ち上げ

(参考)NASA