最果ての惑星、海王星の雲の量の変化が、太陽活動の11年周期と関係しているらしいことが明らかになりました。海王星は太陽から45億kmの距離にあります。これは太陽〜地球感の距離の約30倍に相当し、海王星が受け取る太陽光は地球とくらべて900分の1程度しかありません。にもかかわらず、太陽活動と海王星の雲の量が関係しているようなのです。
カリフォルニア大学バークレー校のImke de Pater氏らの研究チームは、海王星の中緯度に見られる雲が2019年以降に薄くなっていることに気づきました。研究チームは2002〜22年にハワイのW.M.ケック天文台で撮影された画像や、ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータ、また2018〜19年に得られたカリフォルニアのリック天文台のデータを分析しました。
太陽活動の極大期の2年後に海王星の雲が増加
太陽活動は11年周期で極大期と極小期を繰り返しています。活動が活発になると、太陽からはより強い紫外線が放射され、各惑星に降り注ぎます。研究チームは極大期から2年後に、海王星に出現する雲の数が増加していることを発見しました。研究チームはさらに、海王星の雲の数と明るさの間に正の相関関係があることも見出しました。
今回の発見は、太陽の紫外線が十分に強い場合、光化学反応を引き起こして海王星の雲を生成する可能性があるとする理論を支持しているとのことです。
研究チームは29年間、太陽の活動周期のおよそ2.5周期分の海王星の雲の量と太陽活動の関係を明らかにしました。その間、海王星の反射率は2002年に高くなり、2007年に低くなりました。2015年に再び明るくなりましたが、2020年には観測史上最低レベルにまで暗くなり、雲のほとんどが消え去りました。
太陽によって引き起こされる海王星の明るさの変化は、雲の増減と同期しているようにみえます。ただし、太陽活動のピークと海王星の雲量の増加には2年間のタイムラグがあります。これは海王星の高層大気で起こる光化学反応により雲が形成されるまで時間がかかるためだとみられます。
ただし結論を出すためにはさらなる研究が必要です。たとえば、海王星の深層から上昇してくる大気は雲の量に影響しますが、光化学反応によって生成された雲とは関係していないため、太陽周期との相関の研究が複雑になる可能性があります。
研究チームは引き続き、海王星の雲の活動を追跡しています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による海王星の観測と同時期に得られたケック望遠鏡の画像では、より多くの雲が見られました。最新の画像では、とくに北半球や高い高度でより多くの雲がみられたとのことです。