宇宙誕生62億年後に存在した「エルゴルド」と呼ばれる巨大な銀河団ACT-CL J0102-4915をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえました。エルゴルドは、当時存在が知られている銀河団としては最大の銀河団で、質量は太陽の3000兆倍あると推定されています。画像には、エルゴルドが「重力レンズ」としてはたらくことで、形が大きく歪んだより遠方にある銀河も映っていました。
天体の周りの空間は歪み、天体の質量が大きいほど歪みも大きくなります。そして空間の歪みがレンズのようにはたらいて遠方にある天体からの光が曲げられ、明るく見えたり形が歪んで見えたりします。
釣り針のように変形したり、長く引き伸ばされたりした遠方銀河
この画像の右側には、エルゴルドの一部が拡大表示されています。
Bの白枠部分には、まるで釣り針のように形が歪んだ遠方銀河が赤く映っています。この遠方銀河は106億年前に存在していた銀河です。銀河内部の塵によって赤みを帯びているのに加え、宇宙論的赤方偏移も組み合わさって赤く見えています。
重力レンズによる効果を補正した結果、この遠方銀河は円盤状をしており、直径が2万6000光年であることがわかりました。その大きさは天の川銀河の4分の1程度です。銀河中心での星形成が急速に減少していることも判明しました。
Aの白枠部分には、非常に長く引き伸ばされて見える遠方銀河が映っています。この銀河は約110億年前に存在した銀河です。
また画像左下側にある別の遠方銀河では、赤色巨星が発見されました。この星には「Quyllur(ケチュア語で「星」の意)」と名前がつけられました。
重力レンズを利用してハッブル宇宙望遠鏡が「エアレンデル(Earendel)」などの星を発見したことがありますが、それらは青色超巨星でした。Quyllurは地球から10億光年以上離れたところで初めて観測された単独の赤色巨星です。
画像内には他にも、約121億年前の宇宙で赤ちゃん銀河団を形成中とみられる5つの銀河が重力レンズにより見えています。この銀河団のメンバーである可能性をもつ銀河がさらに10個以上発見されているとのことです。また「超淡銀河」と呼ばれる非常に暗い銀河も72億光年先で見つかりました。これは、これまで観測された中で最も遠い超淡銀河です。
Credits: Image: NASA, ESA, CSA; Science: Jose M. Diego (IFCA), Brenda Frye (University of Arizona), Patrick Kamieneski (ASU), Tim Carleton (ASU), Rogier Windhorst (ASU); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI), Jake Summers (ASU), Jordan C. J. D'Silva (UWA), Anton M. Koekemoer (STScI), Aaron Robotham (UWA), Rogier Windhorst (ASU)