ふたご座流星群の母天体、小惑星ファエトンは塵を放出していない!?

太陽に接近中の小惑星ファエトンの想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/IPAC
太陽に接近中の小惑星ファエトンの想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/IPAC

小惑星ファエトンは、太陽に接近すると明るくなり「尾」を形成します。ファエトンが、まるで彗星のようにふるまうことは以前から知られていました。またファエトンは、毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の母天体として知られています。

彗星は氷と塵の混合物で、太陽に接近すると氷が昇華して表面から塵が噴出し、太陽とは反対方向へ伸びる「塵の尾」を形成します。ほとんどが岩石でできている小惑星の場合は一般的に、太陽へ近づいても尾は形成されません。

流星群は、彗星が残した塵が地球の大気に突入して光るものです。彗星のようにふるまうファエトンも、太陽への接近時に塵を放出していると考えられていましたが、どうもそうではないことが明らかになりました。

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太陽観測衛星でファエトンを調査

524日間で太陽を公転するファエトンは、太陽への最接近時には約2100万kmの距離まで近づきます。太陽接近時のファエトン活動は、太陽が明るすぎるため地上望遠鏡では観測できず、太陽観測衛星でなければ観測できません。

アメリカ、カリフォルニア工科大学のQicheng Zhang氏らは、NASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)共同の太陽観測衛星SOHOにより、ファエトンの2022年5月の近日点通過を観測、またNASAの太陽観測衛星STEREOとSOHOのアーカイブ画像も調査しました。

SOHOでファエトンをとらえた画像。左のオレンジフィルタの画像にはファエトンが尾を伴って映っています。右のブルーフィルタの画像にはファエトンは見えていません。Image Credit: ESA/NASA/Qicheng Zhang
SOHOでファエトンをとらえた画像。左のオレンジフィルタの画像にはファエトンが尾を伴って映っています。右のブルーフィルタの画像にはファエトンは見えていません。Image Credit: ESA/NASA/Qicheng Zhang

SOHOの観測では、ナトリウムを検出可能なオレンジフィルタでは尾が明るく見えましたが、塵を検出可能なブルーフィルタでは尾が見られませんでした。さらに尾の形や明るくなる過程が、尾がナトリウムでできている場合の予測と一致しました。これらのことは、ファエトンの尾が塵ではなくナトリウムでできていることを示しています。

ただそうなると、ふたご座流星群の元になる塵を、ファエトンがどうやって供給しているのかという疑問が残ります。研究チームは、数千年前に起きた何らかの破壊的な現象によって、何十億トンもの物質が放出されたのではないかと推測しています。

ファエトンには、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が今後打ち上げる「DESTINY+」がフライバイする予定です。DESTINY+はファエトン表面の撮影のほか、周辺の塵の調査も行うことになっています。

(参照)NASAESA