ウェッブ望遠鏡がとらえた南のリング星雲とその形成シナリオ

Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, STScI, Orsola De Marco (Macquarie University)、IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI)
Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, STScI, Orsola De Marco (Macquarie University)、IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI)
Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, STScI, Orsola De Marco (Macquarie University)、IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI)
Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, STScI, Orsola De Marco (Macquarie University)、IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI)

これらの画像は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が「南のリング星雲」とも呼ばれる惑星状星雲NGC 3132をとらえたものです。南のリング星雲は、ほ座の方向、約2000光年の距離にあります。

いずれもウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)による近赤外線と中間赤外線の画像を組み合わせたものです。それぞれの画像で異なる3つのフィルタが使用されています。ウェッブ望遠鏡による南のリング星雲の画像は以前にも公開されたことがあります。それらはNIRCamとMIRIのそれぞれで撮影された画像でした。

1枚目の画像では、中央の星を取り囲む非常に高温のガスが目立っています。両方の画像にみられる低温ガスのリングによって、高温ガスはまとめられています。2枚目の画像では、より外側に広がったガスが映っています。低温ガスのリングの外側にある分子ガスも、ほとんどが低温です。1枚目の高温ガスの画像は滑らかに見えますが、2枚目のこちらの画像は小さな塊や突起など凹凸が多く見られます。

なお星雲の右下側に見える明るい星は星雲とは無関係の前景の星です。

太陽程度の質量の星は晩年になると膨らんで赤色巨星になります。赤色巨星の外層のガスはやがて宇宙空間に放出されて広がっていきます。放出されたガスが、中央に残された星の「芯」からの紫外線によって電離して輝くのが惑星状星雲です。

オーストラリア、マッコーリー大学のOrsola De Marco氏らの研究により、星雲を作る前の中心星が太陽の3倍近い質量を持っていたことが示されました。ガスや塵が放出されたあとは太陽の60%となっていると見られています。中心星は1枚目の画像では赤く見えています。これは太陽系のカイパーベルト程度のサイズの塵の円盤に囲まれているためです。

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南のリング星雲は複数の星により作られた

南のリング星雲の複雑な形は、複数の星が関係して形成されたと見られています。研究チームによると、南のリング星雲には5つの星が存在している可能性があるとのことです。次の図は、5つの星による南のリング星雲形成の仮説のシナリオを示したものです。

ILLUSTRATION: NASA, ESA, CSA, STScI, Elizabeth Wheatley (STScI)
ILLUSTRATION: NASA, ESA, CSA, STScI, Elizabeth Wheatley (STScI)

【図1】は惑星状星雲になる前の状態です。5つの星の中で星1が最も質量が大きく、最も早く老化して惑星状星雲となります。星2は星1のまわりをゆっくりと周回しています。また星5が星2よりもはるかに星1に近いところを周回しています。

【図2】は、星1の周辺をズームアップしたものです。もう2つの伴星である星3と星4が見えています。星1は膨張しはじめており、星3を飲み込みつつあります。星3は重力によって星1の物質を引き込み始め、双極方向にジェットを噴き出します。星4はまだ相互作用していません。

【図3】では星1が年を取り膨張しています。星3と星4は双極方向にジェットを噴き出しています。この2つの星が相互作用して星からのジェットの向きが変わることで、星1から放出されたガスと塵の縁が不規則に波打ちます。また星1のまわりには、星3と相互作用したときに残された物質の円盤もあります。

【図4】では、星1の露出した超高温な「芯」からの紫外線と星風が、以前に放出された周囲のガスと塵に空洞を作り出します。星3はすでに見えていません。遠方を周回する星5は、公転しながらガスと塵の中で軌跡を残しています。

【図5】は現在の惑星状星雲の姿にかなり近づいています。星5は公転しながらガスや塵と相互作用を続け、星1からゆっくりと遠ざかっていき、星雲の外側に見える大きなリングを作り出します。

【図6】は現在の南のリング星雲です。星1と星2だけが見えています。

(参照)Webb Space Telescope