アルテミス1、打ち上げから帰還までの予定

NASAケネディ宇宙センター39B発射台のモバイルランチャー上のSLSロケット。2022年9月3日撮影。Image Credit: NASA/Bill Ingalls

アポロ計画以来の人類の月面着陸を目指す「アルテミス計画」の第1段階となる「アルテミス1(アルテミス1号)」。当初、2022年8月末から9月初旬に予定されていた打ち上げは9月27日(日本時間28日)に延期されましたが、それもハリケーンの影響で再延期されました。その後、11月14日の打ち上げを目指して準備が進められきましたが、天候の関係で打ち上げ予定日は16日に変更されました。

アルテミス1では、新開発の大型ロケット「SLS(Space Launch System)」を使い無人のオリオン宇宙船(オライオン宇宙船)を打ち上げます。以下では、11月16日に打ち上げられた場合の、打ち上げから帰還までの日程(スケジュール)の情報を紹介します。

なお本文中の丸付き数字(①②……)は、下の図中の丸付き数字に対応しています。またロケットや宇宙船の構成(各部の名称など)については、ミッションの予定の後で紹介しています。

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ミッション期間は25日11時間36分(11月16日打ち上げの場合)

アルテミス1の打ち上げから帰還までの概要を示した図。本文中の丸付き数字は図中の数字に対応しています。Credit: NASA
アルテミス1の打ち上げから帰還までの概要を示した図。本文中の丸付き数字は図中の数字に対応しています。Credit: NASA

SLSは11月16日1時47分44秒(アメリカ東部標準時、日本時間15時47分44秒)にリフトオフ①。2分12秒後に固体ロケットブースター(SRB)を分離、3分11秒後にサービスモジュールのフェアリング、3分16秒後に緊急脱出システム(LAS)を投棄します②。8分3秒後にコアステージ(1段目)のメインエンジンを停止し、その12秒後にコアステージを分離します③。

地球の周回軌道に乗ると、打ち上げ18分9秒後からオリオン宇宙船の太陽電池アレイを展開開始⑤、その後、2段目のICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)により大きな推力が与えられ、地球の軌道を離れ月へ向かいます⑥。打ち上げから1時間57分36秒後に、オリオン宇宙船とICPSが分離されます⑦。その後、月へ向かうときにはESA(ヨーロッパ宇宙機関)が提供するサービスモジュールによってメイン推進システムと電力が供給されます。

オリオン宇宙船は今回、月を周回する「DRO(Distant Retrograde Orbit)」と呼ばれる軌道に投入されます。「Distant」は月面からの距離が遠いこと、「Retrograde」は月の公転方向と逆行することを意味しています。DROでは、少ない燃料で安定した状態を維持することができます。

飛行6日目(11月21日)に、オリオン宇宙船はDROへの移行を開始します⑧。月面に最接近したのち⑨、月の引力を利用してDROへ入ることになります⑩(飛行10日目[11月25日])。

オリオン宇宙船は飛行16日目(12月1日)にDROを離脱します⑫。飛行20日目(12月5日)には再び月面に接近し、適切なタイミングでサービスモジュールのエンジンを再点火して月の重力を利用しつつ地球へ向かうことになります⑬。

飛行26日目(12月11日)、クルーモジュールがサービスモジュールから分離⑮したのち地球の大気圏に再突入⑯、パラシュートを使って降下していき太平洋へ着水します⑰。

なお今回のアルテミス1で、オリオン宇宙船は地球から最大で約48万kmまで離れます。地球と月の平均距離は38万4400kmですから、それよりかなり遠いところまで離れることになります。ちなみにアポロ計画で最も地球から離れたのは、トラブル発生のため月面着陸せず地球へ帰還したアポロ13号の40万170kmでした。オリオン宇宙船は飛行11日目(11月26日)にアポロ13号の記録をこえ、飛行13日目(11月28日)に地球から最も遠いところに到達します。

こちらは打ち上げから帰還までを紹介した動画です(Credit: NASA)。なお打ち上げ日によって日程は変わるため、映像中に表示される日程やミッション期間などは記事中のものとは異なります。

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ロケットと宇宙船の構成

ここからはSLSとオリオン宇宙船の構成についてイラストで紹介します。

Image Credit: NASA
Image Credit: NASA

こちらはアルテミス1で打ち上げられるSLSロケットの「ブロック1」と呼ばれる構成です。

Image Credit: NASA
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SLSの先端部分に搭載されるオリオン宇宙船の構成です。

Image Credit: NASA
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地球の周回軌道に乗った後の構成です。オリオン宇宙船とICPSからなります。ICPSにより月へ向かう軌道に入り、打ち上げの約2時間後にICPSが分離されます。

Image Credit: NASA
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オリオン宇宙船。クルーモジュールとサービスモジュールからなります。ICPSを分離したのち、月を周回し地球へ戻ってくるまでこの構成で飛行します。

Image Credit: NASA
Image Credit: NASA

飛行最終日、クルーモジュール(右)がサービスモジュールから分離され、クルーモジュールが地球の大気圏に再突入します。

(参照)ARTEMIS I PRESS KIT