形成途中の若い星から出たジェットをとらえた画像です。MHO 2147と名付けられたこの天体は、いて座とへびつかい座の境界付近、地球から約1万光年の距離にあります。画像は南米チリにあるジェミニ南望遠鏡で撮影されました。
若い星のジェットは、回転する若い星の磁場と、星を取り囲むガス円盤との間の相互作用によって引き起こされると考えられています。星からは円盤と垂直の2方向にジェットが噴き出します。このようなジェットは「双極ジェット」とも呼ばれます。ジェットの多くは真っ直ぐなものですが、中には画像に映るMHO 2147のようにうねるジェットもあります。
MHO 2147でジェットを噴き出しているのは、中心付近の暗黒星雲に埋もれた「IRAS 17527-2439」と呼ばれる若い星です。ジェットのうねりは、ジェットの向きが時間とともに変化するために生じています。そしてジェットの向きが変わるのは、近くにある伴星の重力の影響によると見られています。IRAS 17527-2439は、三重連星である可能性もあるようです。
こちらの4枚の画像はそれぞれ、MHO 2147の特徴的な領域のクローズアップです。右上はジェットの中心部で、淡いピンク色の領域は、大質量の若い星を含んでいると見られる星雲です。星の周囲には降着円盤があり、そこから放出される物質によって空洞が作られています。ピンク色は、中心星からの散乱光が空洞の壁に反射したものです。残りの3枚に見られる青い領域は、星から放出された物質と、周囲の物質とが衝突することによって励起された水素の雲です。
画像は口径8.1mのジェミニ南望遠鏡に搭載された観測装置「GSAOI(Gemini South Adaptive Optics Imager)」で撮影されました。GSAOIは「GeMs(Gemini Multi-Conjugate Adaptive Optics System)」という補償光学システムを利用して観測を行う赤外線撮像装置です。
補償光学とは、大気のゆらぎを補正するためのものです。GeMsは、自然の星と人工のレーザーガイド星を比較した情報をもとに、コンピュータが可変形鏡の形状を細かく調整し、大気のゆらぎを補正します。冒頭の画像では補償光学によって、若い星からのジェットが非常に鮮明にとらえられています。
Credit:
International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA
Acknowledgments: Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
Acknowledgments: PI: L. Ferrero (Universidad Nacional de Córdoba)
(参照)NOIRLab