1990年4月に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、2021年4月で打ち上げ31周年を迎えました。画像はそれを記念して公開されたものです。
画像に映っているのは「りゅうこつ座AG星」という巨大な星です。周囲をガスと塵からなる星雲に取り囲まれています。星雲は差し渡し5光年ほどあります。これは地球から最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリまでの距離に相当するほどです。この巨大な構造は、約1万年前に星の外層が宇宙に吹き飛ばされたことによって生じました。吹き飛ばされた物質は太陽の質量の10倍に及びます。
りゅうこつ座AG星は「高光度青色変光星(LBV)」と呼ばれるタイプの星です。高光度青色変光星は知られている中で最も質量が大きく、最も明るい星です。太陽の寿命は100億年ほどですが、高光度青色変光星の寿命はわずか数百万年しかありません。珍しいタイプの恒星で、局所銀河群のなかで知られているものは50個もありません。
りゅうこつ座AG星は地球から2万光年離れたところにあり、寿命は500万〜600万年と推定されています。質量は太陽の70倍もあり、太陽の100万倍も明るい光を放っています。りゅうこつ座AG星の周囲に見られる星雲を生み出すような大爆発は、高光度青色変光星の一生のうち1〜2度しか生じません。
画像で赤く見えているのは窒素まじりの水素ガスです。青く見えているオタマジャクシや歪んだ泡のような構造は、星の光に照らされた塵の塊です。
Image Credit: NASA, ESA and STScI
(参照)Hubblesite、ESA/Hubble