太陽に似た若い星のスーパーフレアに伴う巨大フィラメントを初めて検出

国立天文台の行方宏介特別研究員、前原裕之助教らの研究グループの研究により、若い太陽型星「りゅう座EK星」で、スーパーフレアに伴う巨大なフィラメント(温度約1万度のプラズマ)が噴出していたことが明らかになりました。上の画像は、りゅう座EK星でスーパーフレアの発生に伴って巨大なフィラメント噴出が起きるようすを描いた想像図です。

太陽の表面では「フレア」と呼ばれる突発的な爆発現象がしばしば発生します。またフレアに伴う質量放出現象「フィラメント噴出」が発生することも知られています。

太陽によく似た太陽型星では、「スーパーフレア」と呼ばれる、最大級の太陽フレアの10倍以上の規模の超巨大な爆発現象が発見されています。また若い太陽型星では、スーパーフレアがより高頻度で発生することも知られています。しかし太陽型星のスーパーフレアに伴う質量放出現象は検出されたことはありませんでした。

研究グループは京都大学の口径3.8メートル「せいめい望遠鏡」をはじめとする複数の地上望遠鏡や衛星望遠鏡を連携させ、りゅう座EK星の監視観測を長時間にわたり行いました。りゅう座EK星は表面温度が約5750ケルビン(太陽は約5800ケルビン)で太陽と比較的似た構造をしているとみられる恒星です。年齢は1億年程度(太陽は約46億年)で、「若い太陽」の代表として知られています。

観測の結果、太陽型星としては初めて、スーパーフレアの可視光線での分光観測に成功しました。観測データを、太陽フレアに伴うフィラメント噴出のデータと比較したところ、りゅう座EK星のスーパーフレアに伴って巨大なフィラメントが噴出していることが明らかになりました。また噴出したフィラメントは、太陽で発生した最大級の質量放出現象で噴出した物質の10倍以上の質量があり、秒速約500キロメートルもの速度に達していたことも判明しました。

太陽の質量放出現象は、地球環境に大きな影響を及ぼします。今回の研究成果は、若い太陽が周囲にあるまだ若い惑星の環境に大きな影響を与えていた可能性を示唆しています。研究グループは、「若い太陽」が周囲の惑星の大気の維持・成長にどのように影響するのかをより具体的に議論できるようになると期待しています。また太陽でスーパーフレアが発生した場合の地球環境への影響を予測する手がかりにもなるともしています。

Image Credit: 国立天文台

(参照)国立天文台ハワイ観測所岡山分室国立天文台