これら12枚の画像に映っているのは「アインシュタインの十字架(Einstein cross)」です。遠方にある1つのクエーサーの像が、手前側にある銀河の重力レンズによって4つに分かれて見えています。
「重力レンズ」とは、銀河などの天体の重力によって光が曲がる現象です。重力レンズ効果によって、より遠方にある天体の像は歪んだり引き伸ばされたりするほか、天体の像がいくつかに分かれて見えることがあります。そのような重力レンズ現象の中で、遠方の天体の像が4つに分かれるものをアインシュタインの十字架といいます。ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたこともあります。
重力レンズはもともと、アルバート・アインシュタインの一般相対性理論から理論的に導かれました。ただ実際にクエーサーが二つに分かれて見える像が初めて発見されたのは1979年、四つに分かれて見える像が初めて発見されたのは1985年のことでした。
これまでに発見されたアインシュタインの十字架の数は少なく、1985年以降で50個ほどしか見つかっていません。どこを探せば良いのかが分からないので、発見するのが難しいのです。今回、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のガイア(Gaia)衛星のデータと機械学習によって、アインシュタインの十字架が12個発見されました。今回の発見により、アインシュタインの十字架の発見数は一気に25%も増えることになりました。
クエーサーの4つの像の明るさの変化をモニターすることで、宇宙の膨張率の決定にも寄与できるとのことです。今後リリースされるガイア衛星のデータにより、クエーサーの多重像がさらに多く見つかることを研究チームでは期待しています。
Credit: The GraL Collaboration