昼に太陽光が当たると岩石が膨張し、夜に冷えると岩石が収縮します。それを繰り返すことで岩石が壊れることがあります。「熱破砕」と呼ばれるこのような現象は、地球上でもみられます。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の小惑星探査機オシリス・レックスの観測から、熱破砕が小惑星ベンヌで起きている証拠が得られました。熱破砕によって小さな薄い層(1〜10cm)が岩石の表面から剥がれ落ちた剥離の証拠などが発見されたのです。大気のない天体で熱破砕がはっきりと確認されたのは初めてとのことです。
小惑星のような大気のない天体では、昼夜の温度差が激しくなります。そのため熱破砕は、小惑星の風化プロセスとして重要だと以前から考えられてきました。
ベンヌでは昼の最高温度は127℃、夜の最低温度はマイナス73℃になります。ただ熱破砕を示す特徴は小さいため、小惑星の熱破砕を確認できるほど高解像度の画像はこれまで存在していませんでした。
冒頭の画像は、オシリス・レックスが撮影したベンヌ表面の岩石での剥離(上段)と線状の亀裂(下段)の例です。
この画像には、壁面(A)や岩石(B〜F)に見られた、さまざまな大きさの剥離が映っています。
ベンヌでの熱破砕についてさらに研究を進めることで、天体表面の風化のプロセスの解明に役立つ可能性があります。また熱破砕は太陽からの距離や1日の長さ、岩石の組成などさまざまな要因により異なる速度で起きるため、クレーターの数密度による年代推定に影響する可能性もあるそうです。
Image Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2020/sunlight-cracks-rocks-on-bennu