
国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」は、天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」で電波の偏光を観測し、ブラックホールの縁から渦巻き状に広がる強い磁場を発見したと発表しました。
EHTでとらえられた楕円銀河M87の超巨大ブラックホールの画像が2019年に公開され、大きな話題となりました。その後、天の川銀河中心の超巨大ブラックホールをとらえた画像も2022年に公開されました。天の川銀河の超巨大ブラックホールは、M87と比べると質量とサイズが1000分の1以下の小さなものです。それにもかかわらず、両者は外見が非常によく似通っていました。
磁場構造もM87の超巨大ブラックホールと似ている

M87の超巨大ブラックホールについては、偏光の観測から近傍の磁場が見つかり、その成果は2021年に発表されています。今回、天の川銀河の超巨大ブラックホールで見つかった磁場構造は、M87のブラックホールの磁場構造と非常によく似ていました。
これは強い磁場がすべてのブラックホールに共通して見られるものである可能性を示唆しており、また、天の川銀河の超巨大ブラックホールにも隠れたジェットが存在する可能性を示唆しているとのことです。
EHTの副プロジェクト・サイエンティスト、イタリアのナポリ・フェデリコ2世大学のマリアフェリチア・デ・ローレンティス教授は「質量や大きさ、周囲の環境の違いにもかかわらず、ブラックホールにガスが供給され、またその一部がジェットとして放出される物理過程が巨大ブラックホール間で普遍的である可能性を示唆しており、重要な発見です」と述べています。
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こちらはM87と天の川銀河の超巨大ブラックホールのサイズを比較した画像です。比較のため、水星や冥王星の軌道なども書き込まれています。M87は地球から約5500万光年、いて座A*は地球から約2万7000光年の距離にあります。両者の質量やサイズは1000倍以上異なりますが、相対的な距離の違いにより、地球からの見た目のサイズはほぼ同じになります。
(参考記事)
天の川銀河中心の巨大ブラックホールを初撮影
M87銀河の超巨大ブラックホール近傍の磁場の画像化に成功! ジェットの謎の解明につながるか