スピッツァー宇宙望遠鏡は赤外線で観測する宇宙望遠鏡で、2003年8月25日に打ち上げられました。
スピッツァー宇宙望遠鏡は、NASAのグレートオブザーバトリー計画の4つのミッションのうちの1つです。他の3つはハッブル宇宙望遠鏡(1990年打ち上げ)、コンプトンガンマ線衛星(1991年打ち上げ)、チャンドラX線望遠鏡(1999年打ち上げ)で、グレートオブザーバトリー計画の中ではスピッツァー宇宙望遠鏡が最後の打ち上げでした。打ち上げ当初に想定されていた寿命は最低2年半で、5年以上運用することが目標となっていました。
スピッツァー宇宙望遠鏡は、3〜180μmの波長の赤外線で宇宙を観測します。塵の多い星の形成現場や銀河の中心部、また褐色矮星や巨大な分子雲といった低温の天体などの観測を行なってきました。系外惑星の観測も行い、2017年2月にはTRAPPIST-1(トラピスト1)という赤色矮星のまわりに地球程度のサイズの惑星を7つ発見して大きな話題となりました。
スピッツァー宇宙望遠鏡は、地球を追いかけるように太陽をまわりながら観測を行なってきました。地球からの赤外線(熱)が邪魔になるので、それを避けるためです。
また望遠鏡自体から出る赤外線を防ぐため、スピッツァー宇宙望遠鏡は当初、搭載している冷却材(液体ヘリウム)を使って絶対温度5度まで機体を冷やしなが観測を行なっていました。2009年5月には冷却材が尽きた後は「ウォームミッション」がスタートし、冷却材で冷やさなくても運用できるカメラを使って観測を行いました。
スピッツァーが太陽を公転する軌道は、地球の公転軌道よりわずかに大きいため、太陽を1周するのに地球より時間がかかります。そのため時間の経過とともに、少しずつ地球から離れていきます。それに伴って、スピッツァーが地球にアンテナを向けたときに太陽からの熱を多く受けることになります。また太陽電池パネルが太陽から離れる方向を向くことになり、受けることができる太陽光が減ってバッテリーに大きな負担がかかるようになります。近年はそのような困難な状況の中で運用が続けられてきました。
スピッツァー宇宙望遠鏡は2020年1月30日にミッションを終了しますが、ミッション終了後もスピッツァーの残したデータの解析、研究は続けられます。
http://www.spitzer.caltech.edu/
https://solarsystem.nasa.gov/missions/spitzer-space-telescope/in-depth/