赤道が極より速い太陽の自転を世界で初めて再現に成功!

「富岳」で再現された太陽内部熱対流の様子。オレンジ、青の部分はそれぞれ暖かい・冷たい領域に対応しています。千葉大学提供
「富岳」で再現された太陽内部熱対流の様子。オレンジ、青の部分はそれぞれ温かい・冷たい領域に対応しています。千葉大学提供

太陽は、赤道付近の方が極地方よりも速く自転しています。そのような太陽の自転の様子を、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた計算によって再現することに世界で初めて成功したと、千葉大学の堀田英之准教授らが発表しました。

地球では緯度によらず自転周期は同じです。赤道であっても日本付近の中緯度であっても、より高緯度地域であっても、地球は1日に1回転しています。ところが太陽ではそうではなく、赤道付近の方が極地方に比べて速く自転していることが古くから知られていました。赤道付近では25日程度、極地方では30日程度で自転しているのです。このように天体が緯度によって異なる自転速度で回転することは「差動回転」と呼ばれています。

太陽の中心部での核融合反応で生じたエネルギーは、太陽半径の70%ほどまで(放射層)は光によって運ばれ、その外側の層(対流層)では熱対流によって運ばれます。太陽の差動回転は、太陽内部の乱流運動によって形成・維持されていると見られています。

ただ従来のスーパーコンピュータによるシミュレーションでは、太陽の差動回転を再現できていませんでした。たとえばスーパーコンピュータ「京」で計算可能な解像度(約1億点)であっても、実際の太陽とは逆に極地方が速く自転し、赤道が遅くなる結果になっていました。

差動回転を再現できない原因は、太陽内部の乱流的な熱対流を正確に計算できないためと考えられており、「熱対流の難問(convective conundrum)」と呼ばれる太陽物理学における長年の謎となっていました。

堀田准教授は「富岳」を使い、これまでの世界最高解像度である54億点で、太陽の対流層全体を解像した計算を行いました。その結果、太陽と同じように赤道付近が速く回転する差動回転が再現されたのです。

従来の計算では、太陽内部の磁場エネルギーは乱流のエネルギーに対して小さいと考えられてきました。しかし今回の計算では、磁場のエネルギーは乱流エネルギーの最大2倍以上になっていました。また差動回転の形成と維持に、磁場が大きな役割を果たしていることも分かりました。

太陽は黒点が多く活動が活発な「活動極大期」と、黒点が少なく活動が比較的おとなしい「活動極小期」が11年周期で変動しています。なぜ11年周期なのか、このことは太陽物理学最大の謎になっています。

太陽の差動回転は、太陽の黒点の形成や周期活動にとって重要な役割を果たしていると考えられています。太陽の差動回転は太陽の11年周期と密接に関連しており、差動回転の理解は、その謎の解明に向けた重要なステップになるとのことです。

(参照)千葉大学