存在すると考えられているのに、いまだ見つかっていないダークマター。ダークマターの候補の一つに、理論的に考えられているアクシオンという粒子があります。暗黒物質がアクシオンで構成されている場合、パルサーからの光にかすかに輝きが追加されているかもしれないことを示唆する研究を、オランダ・アムステル大学やアメリカ・プリンストン大学などの研究チームが発表しました。

ダークマター自体は光(電磁波)を発することはありません。ただアクシオンを予言する理論が正しければ、一部のアクシオンは強力な電磁場のもとで光に変換される可能性があるとのこと。
研究チームによれば、高速回転する中性子星であるパルサーは非常に強い磁場をもっているため、多くのアクシオンが生成される可能性があり、その一部は観測可能な光に変換される可能性があります。パルサーを観測し、アクシオンによって追加された光を確認できれば、アクシオンの存在を示すことができます。
ただ、アクシオンからの光は、パルサーが発する光のごく一部にすぎません。違いを確認するには、アクシオンの有無によって見え方がどう変わるかを正確に知る必要があります。
研究チームは、アクシオンがどのように生成されるか、アクシオンが中性子星の引力からどのように逃れるか、そして逃れている間、どのように低エネルギーの電磁波に変換されるかなどについての理論的枠組みを構築しました。そして理論をもとに、アクシオンによる光がどのように追加されるのかをモデル化しました。
その後、研究チームは27個のパルサーの観測データをモデルと比較し、アクシオンの存在の証拠が得られるかどうかを確認しました。残念ながら答えは「ノー」、あるいはより楽観的にいうならば「まだ」という結果となったとのことです。
研究チームは今回の研究によって、アクシオンと光との相互作用についての制限を得ることができたとしています。ただ最終的にはアクシオンの存在を示すか、暗黒物質の構成要素である可能性が非常に低いことを確認することが目標であり、今回の研究はその第一歩にすぎないとのことです。
(論文)Novel Constraints on Axions Produced in Pulsar Polar-Cap Cascades