伴星を破壊する「スパイダーパルサー」をチャンドラX線望遠鏡で観測

球状星団オメガ・ケンタウリ(オメガ星団)において、「スパイダーパルサー」と呼ばれる天体について調べた研究が発表されました。スパイダーパルサーは、小さな伴星にダメージを与えることからその名が付けられました。スパイダーパルサーからの強烈な放射と恒星風が、伴星の外層のガスを徐々に引き剥がしていくのです。

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたオメガ・ケンタウリの中心部の画像に、チャンドラ望遠鏡がとらえたX線画像を重ねた画像。いくつかのスパイダーパルサーの位置が示されています。Image Credit: X-ray: NASA/CXC/San Francisco State Univ./A. Cool et al.; Optical: NASA/ESA/STScI/AURA; Image Processing: NASA/CXC/SAO/N. Wolk
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたオメガ・ケンタウリの中心部の画像に、チャンドラ望遠鏡がとらえたX線画像を重ねた画像。いくつかのスパイダーパルサーの位置が示されています。Image Credit: X-ray: NASA/CXC/San Francisco State Univ./A. Cool et al.; Optical: NASA/ESA/STScI/AURA; Image Processing: NASA/CXC/SAO/N. Wolk

パルサーは、大質量星が重力崩壊した後に残る高密度の中性子星が回転している天体です。パルサーの中には1秒間に数十〜数百回転するものがあり、それらは「ミリ秒パルサー」と呼ばれます。スパイダーパルサーは、ミリ秒パルサーの一種です。

パークス電波望遠鏡とミーアキャット(MeerKAT)電波望遠鏡を使って、オメガ・ケンタウリでは18個のミリ秒パルサーが発見されていました。カナダ、アルバータ大学の2人の天文学者は、ミリ秒パルサーのいずれかがX線を放射しているかどうかを調べるため、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線望遠鏡のデータを調査しました。

その結果、X線を放射する11個のミリ秒パルサーが見つかり、そのうち5個がスパイダーパルサーでオメガ・ケンタウリの中心付近に集中していました。次に、オメガ・ケンタウリのデータと、他の12の球状星団にある合計26個のスパイダーパルサーで得られていたチャンドラ望遠鏡のデータを組み合わせました。

スポンサーリンク

スパイダーパルサーは「レッドバック」と「ブラックウィドウ」の2種類

スパイダーパルサーは、伴星の大きさによって2種類が知られています。1つは「レッドバックパルサー」、もう1つは「ブラックウィドウパルサー」です。レッドバックパルサーの伴星は、太陽の10分の1から2分の1の質量、一方のブラックウィドウパルサーの伴星は太陽の質量の5%未満の質量の天体です。

研究チームは、レッドバックのほうがブラックウィドウよりもX線で明るく、両者がはっきりと異なることを発見し、従来の研究を確認しました。研究チームはまた、X線でより明るいパルサーは、より質量の大きな伴星とペアになることも示しました。

チャンドラ望遠鏡が検出したX線は、パルサーからの粒子の風が、伴星からの粒子の風と衝突して衝撃波を生成する際に発生したと考えられています。質量の大きな星ほど高密度の粒子の風を生み出します。その風がパルサーからの粒子と衝突すると、より明るいX線を生み出すのです。

スパイダーパルサーと伴星との距離は、一般的に地球〜月間の1〜14倍ほどしか離れていません。距離が近いため、パルサーの風とともにX線が伴星に重大なダメージを与える可能性があります。

(参照)Chandra X-ray ObservatoryNASA