私たちの太陽系は、「ヘリオスフィア(太陽圏)」と呼ばれる保護シールドに囲まれています。ヘリオスフィアは銀河宇宙線から惑星を守っており、ヘリオスフィアがなければ超新星爆発などで放出される高エネルギー粒子が地球にも大きな損害をもたらす可能性があります。しかし、ヘリオスフィアの境界や形状について、はっきりしたことはいまだに分かっていません。
ヘリオスフィアの形状を最終的に決定するには、ヘリオスフィアの外での測定が必要です。ミシガン大学が主導した最新研究では、ヘリオスフィアの大きさと形を理解するために、探査機がどのようなルートをとるのがよいのかを提案しています。研究チームによると、ヘリオスフィアの「尾」の側面を通って太陽系を出るルートが最適とのことです。
星間探査機の軌道の科学的な利点を分析
現在、ボイジャー1号と2号がヘリオスフィアを離れた唯一のミッションです。ただ1977年に打ち上げられた2機の探査機は、当初想定されていた寿命をはるかに超えており、必要なデータの提供ができなくなっています。
将来の星間探査ミッションは、ヘリオスフィアをこえて現場での星間物質のサンプルを収集することを目的としています。2021年に1000人以上の科学者によりペイロードや打ち上げロケット、その他の技術的な面について議論がなされ、ミッションコンセプトレポートが作成されました。ただそのレポートでは、太陽の進行方向から45度ほど離れた軌道が最適であると仮定しています。
今回の研究では、星間探査機の6つの軌道について科学的な利点を分析しました。その結果、ヘリオスフィアの尾の方向の側面を横切る軌道が、ヘリオスフィアの形状について最も良い視点を提供し、科学的成果を最大化すると結論づけました。
今回の研究ではさらに、星間プラズマが尾を通してヘリオスフィアに直接流入し、ヘリオスフィアの内外で星間プラズマのサンプルを収集できる可能性を示唆しています。
ボイジャー1号は46年間の旅を経て、地球から約163天文単位(約243億km)離れたところまで到達しました。将来の星間探査機は、50年間のミッションを目指して設計され、約400天文単位(約600億km)、さらには1000天文単位(約1500億km)まで航行することが検討されています。実現すれば、ヘリオスフィアとその先の星間物質について、これまでに例のない視点が提供されることになります。