木星氷衛星探査機JUICE、月と地球でスイングバイを実施へ

2023年4月14日に打ち上げられた木星氷衛星探査機JUICE(Jupiter Icy Moons Explorer)が、2024年8月19日から20日(UTC、日本時間20日から21日)にかけて月と地球でスイングバイ(フライバイ)を行います。JUICEは、日本も参加するESA(ヨーロッパ宇宙機関)主導の探査機です。今回のように月と地球で立て続けにスイングバイを行うのは史上初めてとなります。

スイングバイとは、惑星など天体の重力を利用して、探査機の速度をかえる技術です。加速したり減速したり、方向を変えたりすることができます。

JUICEを木星へ直接送り込もうとすると、現実的に不可能なほど大量の推進剤が必要になります。またJUICEは、木星を周回する軌道に入るために減速しなければなりません。その際にも大量の推進剤が必要です。そこでJUICEのような探査機では、天体の重力を利用して軌道を調整し、適切なスピードと方向で木星に到着するようにしています。

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月には700km、地球には6807kmまで接近

月でのスイングバイの予定。CESTは中央ヨーロッパ夏時間のことで、日本時間に換算するにはプラス7時間。
月でのスイングバイの予定。CESTは中央ヨーロッパ夏時間のことで、日本時間に換算するにはプラス7時間。
地球でのスイングバイの予定。CESTは中央ヨーロッパ夏時間のことで、日本時間に換算するにはプラス7時間。
地球でのスイングバイの予定。CESTは中央ヨーロッパ夏時間のことで、日本時間に換算するにはプラス7時間。

今回JUICEは、8月19日21時16分(日本時間20日6時16分)に月に最接近し、そのおよそ24時間半後の21時57分(日本時間21日6時57分)に地球へ最接近します。月には700km、地球には6807kmまで接近します。

今回のスイングバイでは、非常に正確な精度が求められるとのことです。JUICEの運用マネージャーのIgnacio Tanco氏は「道路脇の余裕がわずか数ミリメートルしかないときに、アクセルを最大まで踏み込むようなもの」と表現しています。

8月17日から22日まで、JUICEは世界中の地上局と連絡をとりつつ飛行します。オペレーターはJUICEから送られてくるデータを常に監視し、適切な軌道を保つために必要に応じて微調整を行うことになっています。今回のスイングバイではまた、探査機に搭載されている10の科学機器を起動し、木星系での本番に備えて機器のテストも行われます。

今回のスイングバイによりJUICEは減速して金星に向かいます。木星に向かうには加速した方が良さそうにも思われますが、ESAによれば、今回減速することは、JUICEが木星へ向かうにあたっては実は効率的で、近道となるルートをとることになるとのことです。

金星でのスイングバイは2025年8月に予定されています。その後、JUICEは2026年9月と2029年1月の2度、地球でのスイングバイを行った後、2031年に木星へ到着する予定です。

(参考記事)
木星氷衛星探査計画「JUICE」 打ち上げ後の予定は? 何を探査する?
木星氷衛星探査計画JUICE、探査機はいまどこに?

Image Credit: ESA; Acknowledgements: Work performed by ATG under contract to ESA

(参照)ESA(1)(2)