旅の途中、木星軌道で一休み中の彗星をハッブルが捉えた

この画像は、太陽系外縁部からの旅の途中で、木星のトロヤ群小惑星の住処で一休みしている天体「P/2019 LD2」をハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものです。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像からは、塵とガスからなる「コマ」やジェットの形でのガス放出、そして尾など、P/2019 LD2が彗星活動の兆候を示していることが明らかになりました。P/2019 LD2の現在地は太陽からおよそ7億4800万kmも離れており、太陽光の強度は地球の25分の1ほどです。その距離では水は凍ったままでガスにはなりません。揮発性物質である一酸化炭素や二酸化炭素が、尾やジェットの生成を促している可能性があります。

木星の公転軌道上には、木星の前後約60度ずつ離れたところに「トロヤ群」と呼ばれる小惑星のグループが存在しています。P/2019 LD2は、トロヤ群のある場所で発見された初めての彗星です。なおP/2019 LD2は、ハワイ大学のATLAS望遠鏡により2019年6月に発見されました。

研究チームのシミュレーションによると、P/2019 LD2は、おそらく約2年前に木星に接近し、その後、木星の重力によって木星に先行するトロヤ群小惑星のある場所に居候することになりました。P/2019 LD2は今後およそ2年のうちに木星ともう一度接近し、その後、太陽系の内側へ旅立つことになると見られています。

海王星よりも遠い太陽系の外縁部には、小天体がベルト状に集まった「エッジワース・カイパー・ベルト」があり、そこが短周期彗星の故郷と考えられています。そこにある天体が何らかのきっかけでエッジワース・カイパー・ベルトを飛び出し、海王星の重力の影響で太陽系の内側へと向かいます。さらに天王星の影響でより内側へ、次に土星、木星の影響で……、というように「バケツリレー」方式で太陽系の内側へとやってきて短周期彗星となるのです。P/2019 LD2は、そのようなバケツリレーによって内側に運ばれる彗星の最新のメンバーの1つである可能性が高いと見られています。

シミュレーションによるとP/2019 LD2は、約50万年後には90%の確率で太陽系から飛び出し恒星間彗星になるとのことです。

Image Credit: NASA, ESA, STScI, B. Bolin (IPAC/Caltech)

(参照)Hubblesite