進化初期の銀河でのブラックホールジェットと星間ガス雲の衝突をアルマ望遠鏡で初観測 | アストロピクス

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進化初期の銀河でのブラックホールジェットと星間ガス雲の衝突をアルマ望遠鏡で初観測

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. T. Inoue at al.

アルマ望遠鏡が観測したクエーサーMG J0414+0534(疑似カラー画像)。重力レンズ効果のために像が4つに分かれて見えています。

ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在しており、そのブラックホールは銀河の進化にも大きく影響していると考えられています。たとえば銀河内には星の材料となる星間ガスが存在していますが、ブラックホールから噴き出すジェットが周囲のガスと衝突して銀河の外へガスが流出することで、星の形成が抑制されます。

比較的近い銀河では、ジェットと星間ガス雲の衝突によるガス流出のようすが観測されています。しかし銀河進化の初期において、ジェットが星間ガス雲に及ぼす影響はよく分かっていません。銀河進化の初期のようすを調べるには、遠方の銀河を観測する必要がありますが、従来の観測では解像度が十分ではありませんでした。

近畿大学の井上開輝教授らの研究チームは、地球から110億光年の距離にあるクエーサーMG J0414+0534をアルマ望遠鏡で観測しました。MG J0414+0534の像は、手前にある銀河の重力レンズ効果によって4つに分かれて見え、かつそれぞれの像は拡大されて見えています。その拡大の効果と、アルマ望遠鏡の性能が相まって、非常に高い解像度で観測することが可能になりました。

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. T. Inoue et al.
Image Credit: 近畿大学

上の画像は、アルマ望遠鏡の観測データをもとに、重力レンズ効果を受ける前のMG J0414+0534の姿を再現したものです。オレンジ色は塵と高温電離ガスの分布、緑は一酸化炭素分子ガスの分布をあらわしています(冒頭の画像も同様)。下はMG J0414+0534の想像図で、銀河中心にある超大質量ブラックホールから噴き出すジェットが星間ガスと衝突しているようすが描かれています。

観測から、クエーサーの中心にある非常に強い電波源の左右に一酸化炭素分子ガスが分布している姿が導き出されました。ジェットに沿ってガスが秒速600kmものスピードで運動しており、それはジェットの衝突によってガス雲が激しく揺さぶられていることを示していると研究チームでは考えています。またジェットの噴出が始まったのは数万年前と推定され、ジェットが噴出して間もないころのようすを見ていると考えられています。

今回の観測は、銀河進化の初期に、超大質量ブラックホールからのジェットが星間ガス雲に与える影響や、どのようにガスの流出が引き起こされるのかを明らかにする手がかりになるとみられています。

https://alma-telescope.jp/news/press/quasar-202003