火星の渓谷は氷河下の融水で形成された!?

火星には渓谷がたくさん見つかっています。これらの渓谷は川の流れによってできたのではなく、氷河の下で融けた水が流れたことでできたとする研究が発表されました。

かつての火星は温暖湿潤で、表面には海や湖があり川が流れていたと考えられています。その川の流れによって侵食されて渓谷ができたととする考えが一般的です。今回の研究は、そのような「温暖湿潤な古代の火星」という仮説に一石を投じるものです。

研究チームは火星の渓谷とカナダのデヴォン島にある氷河下の渓谷の類似性に着目し研究を始めました。研究チームは1万以上の火星の渓谷を分析して侵食プロセスを推定。その結果、古代の火星の氷床下で融けた水が流れて地面を侵食したことで、多くの渓谷ができたという結論に至りました。従来の考えとは対照的に、地表面を流れる水が侵食してできた渓谷はごく一部とのことです。

渓谷が形成されたとみられる38億年前、太陽は今より暗かったと考えられています。また火星は地球より遠くにあるため、太陽から受けるエネルギーは地球より小さくなります。火星の気候モデルでは、渓谷が形成された時代の火星は非常に冷涼だったと予測されているのですが、今回の研究は、そのような環境の中で渓谷ができたことを説明することもできます。

氷床の存在は、火星で生命が生き残るために都合がよかったかもしれません。氷床が水を保護して安定させるほか、強い磁場のない火星で、太陽の放射線などから生命を守る役割を果たしていた可能性もあります。

Image Credit: NASA/JPL/USGS

(参照)UBC News