大質量の星は、小質量の星と異なり無秩序の混乱の中で誕生する!?

太陽と同じ程度の質量の若い恒星は、周囲にあるガスと塵の雲から比較的規則正しく物質を取り込んでいるのが観測されています。取り込まれる物質は星の周囲に円盤を形成し、星が消化できるペースで物質を星に供給します。惑星はその円盤の中で形成されます。

ただそのような円盤は質量の大きな星では見つかっていませんでした。そのため、大きな星の成長過程が、単に小さな星の成長過程をスケールアップしたものなのかどうか分かっていませんでした。今回、アルマ望遠鏡の観測によって、単にスケールアップしただけではないことが分かったとのことです。

オランダ、ラドバウド大学ナイメーヘン校のCiriaco Goddi氏らの研究チームはアルマ望遠鏡を使い、地球から約1万7000光年の距離にある「W51」と呼ばれる星形成領域にある大質量の非常に若い3つの星を観測しました。研究チームは、小さな星の周囲に見られるような大きくて安定した円盤の証拠を探していました。しかし大質量のそれらの星では、円盤が無秩序に混乱しているように見えることが分かりました。

画像はいずれも、アルマ望遠鏡がとらえた大質量の若い原始星周辺のようすです(Image Credit: Goddi, Ginsburg, et al., Sophia Dagnello, NRAO/AUI/NSF.)。グレーは原始星付近の塵、赤と青は原始星から噴き出すジェットの物質です。赤は地球から遠ざかる物質、青は地球へ向かってくる物質を示しています。

今回の観測からは、ガスの流れがさまざまな方向から若い星に向かって落ちていることが示されました。ジェットはまだ見ぬ小さな円盤があるに違いないことを示唆しています。約100年前に円盤が反転したように見える星もありました。

これらの大質量の若い星は、少なくとも非常に初期の段階では、さまざまな方向から不安定な割合で物質を取り込むことによって形成されると研究チームは結論づけました。小さな星で物質が安定して流入しているのとは対照的です。物質の流入経路が複数あるため、より小さな星にあるような大きくて安定した円盤の形成が妨げられているのだろうと見ています。

無秩序に流入するモデルは、コンピューターシミュレーションに基づいて提案されました。今回、モデルを支持する観測的な証拠が得られたとGoddi氏は語ります。

太陽より質量の大きな星の形成過程の想像図。左上の図では、円盤から物質が若い星に取り込まれ、垂直方向にジェットが噴き出しています。別の方向から物質が流入し(右上)、円盤が変形し始め(左下)、円盤とジェットの向きが変わっています(右下)。Image Credit: Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF

(参照)NRAO