ベテルギウスが予想より速く回転して見えるのは「沸騰する泡」のためか?

オリオン座の肩のところにある赤い1等星ベテルギウス。この赤色巨星は最近、予想より速く回転していることが示唆されました。マックス・プランク天体物理学研究所のJing-Ze Ma氏らの研究チームは、ベテルギウスの表面が沸騰しているかのように泡立つことで、まるで速く回転してるかのように観測される可能性があるとする研究を発表しました。

ベテルギウスは非常に巨大な恒星です。太陽のほぼ1000倍の大きさで、仮に太陽の場所に置いたとすると、地球などは余裕で飲み込み、木星軌道に達するほどの大きさです。

腕をたたんで高速回転しているフィギュアスケーターが腕を伸ばすと回転が遅くなるように、恒星が膨張して赤色巨星になると回転がゆっくりになります。しかし最近の観測から、ベテルギウスは高速(秒速5km)で回転しており、単独の星が進化した赤色巨星の自転速度より2桁も速いことが示唆されました。

南米チリにあるアルマ望遠鏡によるベテルギウスの観測からは、星の半分が私たちに近づいているように見え、もう半分は遠ざかっているように見えました。これは他の研究とも相まって、ベテルギウスが高速回転しているという解釈につながりました。

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解像度が低いため回転しているように見えている?

ベテルギウスが完全に丸い球体であれば、その解釈は疑う余地はありません。ただベテルギウスの表面は、対流によって泡立っているかのようになっています。沸騰する泡はベテルギウス表面の大部分を覆い、その大きさは太陽から地球軌道ほどの距離までになることもあります。そしてそれらの泡は最大で秒速30kmもの速度で上昇・下降します。

沸騰する泡の集団が星の半分で上昇し、別の泡の集団がもう半分で沈んでいきます。Jing-Ze Ma氏らは、ベテルギウスのそのような表面を観測すると、アルマ望遠鏡などの観測は解像度に限界があるため、星が高速で回転しているように見えるのではないかと考えています。

こちらの映像はベテルギウスの沸騰する表面のシミュレーションです(Credit: MPA, Ma, Jing-Ze et al, 2024)。内部の対流によって表面がどのように変化するかを示しています。研究チームはこのような状況をアルマ望遠鏡で観測した場合にどのように見えるかを示し、表面が泡立つことで回転しているように見えることを示しました。

Image Credit: MPA, Ma, Jing-Ze et al, 2024
Image Credit: MPA, Ma, Jing-Ze et al, 2024

左の列は恒星の高解像度シミュレーションで、中央の列は左のシミュレーションを解像度を下げて観測したらどう見えるかを模擬したもの。右の列はアルマ望遠鏡による実際の観測結果です。中央の列と右の列が似ていることがわかります。

(参照)Max Planck Institute for Astrophysics