大質量ブラックホールの「冬眠」は銀河衝突がもたらす!?

銀河衝突によってブラックホール周辺のガスが持ち去られる様子を描いた想像図。
銀河衝突によってブラックホール周辺のガスが持ち去られる様子を描いた想像図。

ほとんどの銀河の中心には大質量ブラックホールが存在すると考えられています。一部の銀河は、銀河中心の大質量ブラックホールに落下する物質をエネルギー源として激しく活動し、明るく輝いています。一方で多くの銀河ではブラックホールはガス欠でエネルギー源が枯渇状態にあり、銀河中心でひっそりとたたずんでいます。活動が活発になるきっかけは銀河衝突と見られています。しかし活動性を終了させる機構はよく分かっていませんでした。

三木洋平助教(東京大学)、森正夫准教授(筑波大学)、川口俊宏准教授(尾道市立大学/国立天文台)らの研究グループは、銀河衝突がブラックホール活動の停止機構としてもはたらくという仮説を立て、スーパーコンピューターを駆使してその仮説を検証することで、銀河衝突と銀河中心のブラックホールの活動性の関係の解明に挑みました。

その結果、銀河中心に小さな衛星銀河が衝突すると、その小さな銀河がブラックホール周辺のガスを持ち去ってしまい、エネルギー源を失ったブラックホールは活動性を停止して冬眠することが示されました。

銀河の中心領域に衛星銀河が衝突してきた場合は大質量ブラックホールの活動性が停止し、銀河中心を離れて衝突する場合には活動が活性化すると考えられるとのことです。つまりブラックホールの活動性には、衝突してくる衛星銀河の軌道が重要な役割を果たしているというのです。

研究グループは今後も、最新のスーパーコンピューターを使った超大規模シミュレーションによって、銀河とブラックホールの共進化過程の解明に向けて探究を続けるとのことです。

Image Credit: Miki et al. 2021

(参照)東京大学筑波大学計算科学研究センター