今から350年前の1670年、こぎつね座で明るく輝く新星が観測され、数か月後には北極星とほぼ同じ明るさになりました。1年後に姿を消したこの星は後に「こぎつね座CK」と呼ばれるようになります。
新星とは、白色矮星に伴星からのガスが降り積り爆発する現象です。爆発後に白色矮星は残ります。なお同様なプロセスで最後に白色矮星ごと吹き飛んでしまう現象は「(Ia型)超新星」と呼ばれます。
1670年にこぎつね座CKが現れたのは、二つの普通の星が激しく衝突した結果であることが示唆する研究が2015年に発表されました。2018年には同じ研究チームが、1670年の爆発地点付近でのアルミニウムの放射性同位体の発見を受けて、星の一つが赤色巨星であることを提案しました。さらに2018年に別の研究チームが発表した論文によれば、1670年に明るくなったのは褐色矮星と白色矮星の合体した結果だと示唆されました。
このたびジェミニ北望遠鏡での新たな観測から、こぎつね座CKがこれまで報告されていたよりもはるか遠くにあり、またはるかに高速にガスを噴出していることが明らかになりました。
星雲の膨張速度などから研究チームは、こぎつね座CKがこれまで考えられてきたより5倍も遠く、約1万光年の距離にあることを決定しました。これは1670年の爆発が従来の推定よりはるかに明るく、ほぼ25倍のエネルギーを放出していたことを意味します。
研究チームによれば、放出されたエネルギーから考えると、こぎつね座CKは新星と超新星のほぼ中間にあたるといいます。このような天体はほとんど観測されておらず、爆発の原因は分かっていません。研究チームの一人、イギリス・キール大学のNye Evans氏は、こぎつね座CKの正体について「何者でないかは分かっているが、何者であるのかは誰も知らない」と述べています。
Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA
Image processing: Travis Rector (University of Alaska Anchorage), Jen Miller (Gemini Observatory/NSF's NOIRLab), Mahdi Zamani & Davide de Martin
(参照)NOIRLab