ハワイ、マウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)は、広視野かつ高解像度、高感度で宇宙を観測することができます。そのため撮影された画像には、非常に多くの天体が映ります。
国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、HSCで得られた画像に映っていた56万個もの銀河を、人工知能を活用して形態を分類しました。その結果、97.5%という高い精度で、銀河の形を自動分類することに成功しました。渦巻銀河に識別された銀河は約8万個にのぼり、その多くは25億光年以上離れた宇宙に存在していることが分かりました。
国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、HSCを使って得られた膨大な観測データに、人工知能の1つであるディープラーニング技術を適用する「すばる銀河動物園プロジェクト」を立ち上げました。今回の研究は、そのプロジェクトの最初の成果です。この観測データは、HSCを用いた300夜にも及ぶ大規模探査によって得られたものでした。
人の目で分類した銀河の訓練データがあれば、さまざまな形の銀河に分類することができます。国立天文台では市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」を進めています。これは一般市民にHSCでとらえた銀河の画像を見てもらい、衝突・合体の兆候のある銀河を分類するプロジェクトです。その成果をディープラーニングと組み合わせることで、衝突銀河を大量に見分けられる可能性があります。
また2022年から、すばる望遠鏡の新しい観測装置である超広視野多天体分光装置Prime Focus Spectrograph(PFS)が稼働する予定です。現在、PFSを使って銀河までの距離を測定する大規模探査が計画されています。今後はそのデータもあわせて、銀河の形が時間とともにどう変化してきたのかを調べることも期待できるとのことです。