ブラックホールに身ぐるみ剥がされ命からがら生き延びた星

地球から約2億5000万光年離れた銀河GSN 069で、ブラックホールに物質を奪われ続け、周期的にX線で悲鳴を上げる星が見つかりました。NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線望遠鏡と、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線天文衛星XMM-Newtonの観測から、その存在が分かりました。

その星は、GSN 069にある超巨大ブラックホールを周回しています。GSN 069のブラックホールの質量は太陽の約40万倍。超巨大ブラックホールとしては小ぶりなものです。

あるとき赤色巨星が接近し、そのブラックホールの重力に捕らえられました。赤色巨星の外層のガスは引き剥がされてブラックホールへと落ちていき、やがて白色矮星と呼ばれる星のコアが残されます。その白色矮星は現在、ブラックホールのまわりの歪んだ楕円軌道を9時間で1周しています。

楕円軌道の中でブラックホールに最も近づく地点は、事象の地平面の半径の15倍ほどの距離しかありません。事象の地平面とは、それより内側に行くともう外へは戻ってこられない境界面のことです。

9時間ごとに最接近する際に、ブラックホールは白色矮星の物質を、ブラックホールの周囲にある円盤に引き寄せます。物質が円盤へと移動するときにX線が放たれます。X線が周期的に、そして劇的に変化するようすが、チャンドラとXMM-Newtonによってとらえられたのです。

白色矮星はブラックホールから逃れることはできずに今後も質量を失い続け、およそ1兆年後には木星程度の質量の惑星になる可能性があります。

冒頭の画像には、ブラックホールに最も近づいた白色矮星が描かれています。左上の枠内は、チャンドラが観測した画像です。

Credits: X-ray: NASA/CXO/CSIC-INTA/G.Miniutti et al.; Illustration: NASA/CXC/M. Weiss;

https://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/news/star-survives-close-call-with-a-black-hole.html

https://chandra.si.edu/photo/2020/gsn069/index.html