超小型衛星が間近からとらえたDARTの小惑星衝突 | アストロピクス

超小型衛星が間近からとらえたDARTの小惑星衝突

2022年9月26日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験機)を小惑星ディモルフォスへ衝突させ、小惑星の軌道を変える実験が行われました。その15日前にDARTからは、イタリア宇宙機関(ASI)の「LICIAcube(Light Italian CubeSat for Imaging Asteroids)」というキューブサットが放出されていました。

Image Credit; NASA/ASI/University of Maryland
Image Credit; NASA/ASI/University of Maryland

この画像はそのLICIAcubeがとらえたもので、DARTの衝突後のようすが映っています。ディモルフォスは小惑星ディディモスを周回していますが、画像の上側に見えるのがディディモス、下側がディモルフォスです。ディモルフォスから飛び散った破片が広がっているのも映っています。左の画像は衝突から約2分40秒後に2つの小惑星を通過しつつ撮影されたもので、右はその20秒後に現場から離れながら撮影された画像です。

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破片の噴出が推進力となり小惑星の軌道に影響した

Image Credit: ASI/University of Maryland/Tony Farnham/Nathan Marder
Image Credit: ASI/University of Maryland/Tony Farnham/Nathan Marder

こちらはLICIAcube搭載のカメラで撮影された画像をもとに作成された動画です。LICIAcubeが通過しながら撮影したことで見える角度が急速に変化しており、広がる破片がさまざまな角度から見えています。

LICIAcubeの画像の分析から、衝突により推定1600万キログラムもの岩石や塵が噴出したと、2025年8月21日のPlanetary Science Journal誌に発表されました。

小惑星から放出された破片の質量は小惑星全体の0.5%未満でしたが、それは探査機の質量の約3万倍に相当します。その噴出物は、ロケットエンジンが短時間噴射したときのように、小惑星の軌道を変化させるのにも役立ったとみられています。

ディモルフォスは岩塊が寄り集まってできた「ラブルパイル天体」だと考えられています。また多くの地球近傍小惑星は同様の構造を持つとみられており、破片の噴出による推進力は、地球から小惑星をそらすための宇宙船を開発する際に考慮に入れるべき重要な要素となるだろうとのことです。

(参考)
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(参照)NASA