夏の大三角を構成する星の一つで、日本では織姫星(織女星)としても知られる、こと座の1等星ベガ。ベガのまわりには「デブリ円盤」と呼ばれる円盤が存在することが知られています。デブリ円盤は、微惑星どうしが衝突するなどして砕けた破片や塵からなる星周円盤です。ベガを取り囲む直径約1600億kmのデブリ円盤が、ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって詳細に観測されました。
ハッブル&ウェッブ望遠鏡の画像
上がハッブル宇宙望遠鏡、下がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた、ベガのデブリ円盤の画像です。ハッブル望遠鏡は煙ほどの大きさの粒子が反射した光を、ウェッブ望遠鏡は砂粒ほどの粒子が放つ赤外線をとらえています。どちらも擬似的に色付けした擬似カラー画像です。
ベガのデブリ円盤には、恒星から約60天文単位(太陽から海王星までの距離の2倍)のところにわずかな隙間がありますが、それ以外はほぼ滑らかです。このことは巨大な惑星が見えている範囲にはないことを示しているようです。なお、1天文単位は太陽〜地球間の平均距離に相当する約1億5000万km。
似た星でも異なる円盤
みなみのうお座の1等星フォーマルハウトは、地球からの距離や年齢、温度がベガと似ています。フォーマルハウトの周囲にもデブリ円盤が発見されていますが、ベガの円盤のように滑らかではなく、3つの環(円盤)が入れ子状に存在するなどより複雑な構造をしています。フォーマルハウトの複雑な構造は、まだ見つかってはいないものの惑星の存在を示している可能性があると見られています。
研究チームの一人で、アリゾナ大学のGeorge Rieke氏は次のように述べています。「ベガとフォーマルハウトの間の物理的な類似性を考えると、なぜフォーマルハウトでは惑星が形成できたようにみえ、ベガではそうでないのか。違いは何か。恒星の周辺の環境か、あるいは恒星自体がその違いを生み出しているのだろうか。不可解なのは、どちらにも同じ物理法則がはたらいていることです」
(参考記事)若い恒星フォーマルハウトを取り囲む塵円盤の詳細をウェッブ望遠鏡が撮影!
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, S. Wolff (University of Arizona), K. Su (University of Arizona), A. Gáspár (University of Arizona)