カイパーベルトは予想外に大きい? カイパーベルトの外側に天体群を発見

最遠の惑星、海王星は、太陽から約30天文単位(au;1天文単位は太陽〜地球間の平均距離に相当する約1億5000万km)のところを公転しています。その海王星の外側には、小天体がリング状に分布する「カイパーベルト」と呼ばれる領域があります。カイパーベルトは約30〜55auの範囲にあると考えられていますが、その外側に未知の天体群が存在する可能性を示唆する研究が発表されました。

すばる望遠鏡(左)とニューホライズンズ探査機(右)。Image Credit: 国立天文台/Southwest Research Institute
すばる望遠鏡(左)とニューホライズンズ探査機(右)。Image Credit: 国立天文台/Southwest Research Institute

NASA(アメリカ航空宇宙局)のニューホライズンズ探査機は2015年、カイパーベルトにある準惑星の冥王星のそばを通過しつつ探査を行い、2019年にはカイパーベルト天体アロコスを観測しました。今回の研究成果は、そのニューホライズンズ探査機と、ハワイ、マウナケア山頂にある日本のすばる望遠鏡の協力によって得られたものです。

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カイパーベルトの外縁より遠方にある天体を11個発見

すばる望遠鏡のウェブページによると、ニューホライズンズ探査機が新たに接近したり観測したりする天体を見つけ出すため、すばる望遠鏡を使った観測が2004年以来行われてきました。2020年からは、すばる望遠鏡のハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam;HSC)を使った観測が行われ、2023年までに239個のカイパーベルト天体が発見されました。その中に、既知のカイパーベルトの外縁より遠方にある天体が11個見つかりました。

Image Credit: Wesley Fraser
Image Credit: Wesley Fraser

この図は、HSCによって発見されたカイパーベルト天体の距離別の分布を示したものです。横軸は太陽からの距離、縦軸は天体の個数を示しています。このグラフを見るとわかるように、70〜90auの付近に一群の天体がありそうにみえます。またその手前の55〜70auのところに天体が少ない谷間があるようにみえます。

「70〜90auに新たな天体群があるかもしれない。もしこれが確かならば大発見」だと、研究チームの吉田二美氏(産業医科大学・千葉工業大学惑星探査研究センター)は語っています。「原始太陽系星雲はこれまで信じられていたよりもはるかに大きかったことになり、太陽系の惑星形成過程の研究に影響を与えるかもしれません」

ニューホライズンズ探査機のウェブページによれば、今回の結果には次のような意味があるとしています。一つは、カイパーベルトがこれまで考えられていたよりも遠くまで広がっているかもしれないこと、あるいは既知のカイパーベルトの先にもう一つのカイパーベルトがあるかもしれないことです。もう一つは、現在約60auの距離にいるニューホライズンズ探査機がまだカイパーベルトを越えていない可能性があることです。

「太陽系のカイパーベルトはほかの多くの惑星系と比べて非常に小さいと思われていましたが、私たちの結果は、その考えが観測バイアスによるかもしれないことを示唆しています」とニューホライズンズミッションの共同研究者Wes Fraser氏(カナダ国立研究機構)は述べています。「今回の結果が確認されれば、太陽系のカイパーベルトはほかの星のものと比べて、小さくもないし珍しいものでもないかもしれません」

今回発見された天体の正確な軌道を決定すべく、研究チームはHSCを使った観測を継続中とのことです。

(参照)すばる望遠鏡New Horizons