この画像に映っているのは、100億年前の宇宙にある遠方銀河PJ0116-24です。PJ0116-24は、「Hyper Luminous Infrared Galaxy(HyLIRG)」と呼ばれる、赤外線で非常に明るく輝く銀河です。激しい星形成によって明るく輝いています。
従来の研究では、HyLIRGのような銀河は、銀河同士の合体によって生じると示唆されています。銀河の合体により高密度のガス領域が形成され、激しい星形成が引き起こされるのです。ただ、星形成ガスが銀河中心に向かって急速に流れ込む場合、孤立した銀河でもHyLIRGになる可能性があります。
冒頭の画像は、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)の画像(赤)と、アルマ望遠鏡の画像(青)を合成したものです。アルマ望遠鏡のデータは低温のガス、VLTのデータは温かいガスを示しています。マックス・プランク地球外物理学研究所のDaizhong Liu氏らは、VLTとアルマ望遠鏡のデータを組み合わせ、PJ0116-24内部のガスの動きを研究しました。
分析の結果、PJ0116-24のガスが、銀河の衝突後に予想される無秩序な状態ではなく、組織立って回転していることがわかりました。これは、銀河がHyLIRGになるには、必ずしも銀河の合体が必要ではないことを示唆しています。
なお、PJ0116-24はリング状の銀河というわけではありません。「アインシュタイン・リング」と呼ばれるもので、手前にある天体の重力レンズ効果によって、遠方のPJ0116-24の像がリング状にゆがんで見えています。重力レンズ効果によって拡大されて見えることで、詳細な観測が可能になっています。
画像は2024年7月15日に、ESOの「今週の1枚(Picture of the Week)」として公開されました。
Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/ESO/D. Liu et al.
(参照)ESO