大きな銀河には、重力的に結びつき、その周りを回っている衛星銀河(伴銀河)が存在しています。たとえば、大マゼラン銀河や小マゼラン銀河は天の川銀河の衛星銀河です。
衛星銀河は、ダークマターの小さな塊にガスが集まり、そこから星々が生まれることで形成されたと考えられています。ただ従来、ダークマターの標準理論から予想される数よりも、非常に少ない衛星銀河しか見つかっていませんでした。このような数の食い違いは「ミッシングサテライト(失われた衛星銀河)問題」と呼ばれていました。
すばる望遠鏡のデータから新たに2つの衛星銀河を発見
国立天文台などの研究チームは、すばる望遠鏡の観測データから矮小銀河の探索を進め、これまで3つの衛星銀河を発見してきました。それらは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を使って広い範囲を観測する「戦略枠プログラム(HSC-SSP)」のデータから発見されたものです。HSC-SSPの最新の公開データから、今回、さらに2つの矮小銀河(おとめ座III〔Virgo III〕、ろくぶんぎ座II〔Sextans II〕)が新たに発見されました。それらはすべて、30万光年以上離れたところにあります。
HSC-SSPで観測された天域(約1140平方度)で以前から知られていた4つの矮小銀河を含めて、今回の発見で合計9個の矮小銀河が見つかったことになります。
最新の理論的な分析からは、天の川銀河には220個程度の衛星銀河があると予想されています。しかしHSC-SSPの天域で見つかった数を、天の川銀河全域に換算すると、少なくとも500個の衛星銀河が存在することになります。「ミッシングサテライト問題」ではなく、「衛星銀河が多すぎる問題」になってしまったのです。
研究チームは、今後はより広い天域でさらに暗い矮小銀河まで探査範囲を広げ、衛星銀河の個数の統計精度を上げていく必要があるとしています。南米チリで建設中にベラ・ルービン天文台では、口径8.4mの望遠鏡に3.2ギガピクセルのLSSTカメラを取り付け、10年にわたり現地から見える空のサーベイを繰り返し行うことを計画しています。研究チームによれば、そのような大規模探査によって、多くの新しい衛星銀河が発見され、ダークマターとその中の銀河形成過程が抱える問題が解決されることが期待されるとのことです。