NASAの探査機、衝突実験で小惑星の軌道変更に成功

探査機DARTを衝突させることで小惑星の軌道を変えることに成功したとNASA(アメリカ航空宇宙局)が発表しました。天体の運動を意図的に変化させたのは史上初のことです。

2022年10月8日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像。DARTの衝突から285時間後のディモルフォスからの噴出物のようすがとらえられています。噴出物による「尾」の形は時間とともに変化しています。Image Credit: NASA/ESA/STScI/Hubble
2022年10月8日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像。DARTの衝突から285時間後のディモルフォスからの噴出物のようすがとらえられています。噴出物による「尾」の形は時間とともに変化しています。Image Credit: NASA/ESA/STScI/Hubble
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小惑星の軌道周期を32分短縮

NASAの探査機DARTは2022年9月26日、小惑星ディディモスの周りを回るディモルフォスに衝突しました。衝突前、ディモルフォスは11時間55分かけてディディモスを周回していました。DARTが時速2万2530kmで正面衝突したことによりディモルフォスの軌道は32分短くなり、1周11時間23分(±2分)に変化したのです。

NASAはディモルフォスの軌道周期を73秒以上は変化させたいとしていましたが、実にその25倍以上もの変化が見られたことになります。衝突により飛び出した破片の反動により変化がより大きくなったと見られます。

軌道周期の変化は、地上からの観測によりとらえられました。地上の望遠鏡からは、2つの小惑星をあわせた光が観測されます。ディモルフォスがディディモスを周回するとき、ディモルフォスの影がディディモスに落ちたり、逆にディディモスのかげにディモルフォスが入ったりします。その際の明るさの周期的な変化を観測することで、ディモルフォスの軌道周期を知ることができるのです。

この画像はLICIACubeがとらえた複数の画像を合成したもので、DARTの衝突後にディモルフォスから飛び散った噴出物が映っています。Image Credit: ASI/NASA/APL
この画像はLICIACubeがとらえた複数の画像を合成したもので、DARTの衝突後にディモルフォスから飛び散った噴出物が映っています。Image Credit: ASI/NASA/APL

DARTが衝突前の接近時に撮影した画像や、DARTから分離して観測を行ったキューブサット「LICIACube」のデータなどをもとに、小惑星の形状や質量などを推定するための研究が進められています。またおよそ4年後には、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の探査機ヘラがディモルフォスとディディモスを訪れて詳しく調査する予定になっています。

(参考記事)「DART衝突後、小惑星から1万kmにわたり伸びる噴出物を地上望遠鏡でとらえた」「DARTの小惑星衝突をハッブルとウェッブが同時観測!

(参照)NASA