生まれつつある巨大惑星を初めて直接観測! 太陽系とは異なるでき方か!?

ハワイ、マウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」により、まさに生まれつつある惑星(原始惑星)が初めて直接観測されました。国立天文台ハワイ観測所やNASA(アメリカ航空宇宙局)、東京大学、アストロバイオロジーセンターらの国際研究チームによる成果です。

Image Credit: T. Currie/Subaru Telescope
Image Credit: T. Currie/Subaru Telescope
Image Credit: T. Currie/Subaru Telescope
Image Credit: T. Currie/Subaru Telescope

画像は、すばる望遠鏡が赤外線でとらえた「ぎょしゃ座AB星(AB Aur)」です。恒星を取り囲む原始惑星系円盤の中に原始惑星(AB Aur b)がはっきりと映し出されています。画像内の「★」の位置に恒星があり、黄色の破線の楕円は太陽系の海王星の軌道(約30au[天文単位、1auは太陽〜地球間の距離に相当する約1億5000万km])を表しています。

AB Aurは約200万歳という非常に若い星です。惑星のAB Aur bは木星の4倍の質量をもち、93au離れた軌道を公転しています。

原始惑星系円盤の中での惑星形成の標準的なモデルでは、塵が集まって微惑星へと成長し、それらが衝突合体を繰り返しつつ大きくなっていき、さらに円盤内のガスを取り込んで木星や土星などのような巨大惑星が形成されると考えられています。いわばボトムアップで惑星が形成されるというものです。太陽系の木星や土星などは、このようにしてできたと見られています。また太陽系外で見つかった巨大惑星の中には、主星のすぐ近くや非常に遠いところに存在するものも知られていますが、それらは形成後に移動した可能性が考えられています。

一方、原始惑星系円盤内で、重力不安定により生じたガスの塊が種となって巨大惑星が形成されるという、いわばトップダウン型のモデルもあります。AB Aurでは主星から遠く離れた場所で原始惑星が見つかりましたが、AB Aurは非常に若くて惑星が移動するほどの時間はなく、今回の発見は重力不安定による惑星系形成の確かな例だと考えられています。

Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Thayne Currie (Subaru Telescope, Eureka Scientific Inc.) 、IMAGE PROCESSING: Thayne Currie (Subaru Telescope, Eureka Scientific Inc.), Alyssa Pagan (STScI)
Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Thayne Currie (Subaru Telescope, Eureka Scientific Inc.) 、IMAGE PROCESSING: Thayne Currie (Subaru Telescope, Eureka Scientific Inc.), Alyssa Pagan (STScI)

今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡による観測も行われたほか、ハッブルのアーカイブデータも調べられました。この画像はハッブル宇宙望遠鏡によるもので、右上はNICMOS(近赤外カメラ・多天体分光器)で2007年に撮影された画像、右下はSTIS(画像分光器)で2021年に撮影された画像です。時間の経過とともに、原始惑星が反時計回りに移動していることが分かりました。

Image Credit: ARTWORK: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI)
Image Credit: ARTWORK: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI)

こちらは今回発見された原始惑星AB Aur bの想像図です。

(参照)すばる望遠鏡Hubblesite