2つのウォルフ・ライエ星が作り上げた四重の塵の殻 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影 | アストロピクス

2つのウォルフ・ライエ星が作り上げた四重の塵の殻 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がMIRI(中間赤外線装置)でとらえたこの画像には、2つのウォルフ・ライエ星を含む三重星系が作った、渦を巻くように星系を取り囲む四重の塵の殻(シェル)が映っています。画像には三重の殻がはっきりと見え、四つ目の殻は画像の端付近でぼんやりと見えています。

エジプト神話に登場するヘビにちなみ「アペプ」と呼ばれるこの天体の中心には、2つのウォルフ・ライエ星が存在しています。ウォルフ・ライエ星は、特に巨大な大質量星が、晩年に外層の水素ガスの大部分を失った天体です。非常に珍しい天体で、2000億〜3000億個あるとみられる天の川銀河の恒星のうちわずか1000個しか存在しないと推定されています。これまでに観測されたウォルフ・ライエ星を含む連星系のうち、ウォルフ・ライエ星を2つ含む例はアペプだけです。

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190年ごとに形成された塵が殻状に広がった

アペプの2つのウォルフ・ライエ星は190年ごとに接近します。その際、2つの星から噴き出す恒星風が衝突し、25年間にわたり炭素に富む塵を形成します。それらの塵は秒速2000〜3000kmで広がっていきます。時間をおいて塵が広がるため、同心円状の殻構造がみられるようになっています。

3つ目の星が塵の殻にあけた穴を図示した画像
3つ目の星が塵の殻にあけた穴を図示した画像

もう一つの天体は大質量の超巨星です。画像を見ると、天体の中心から見て10時から2時の方向にかけて漏斗状にやや暗くなっています。これは3つ目の星が塵の殻にあけた穴です。

2つのウォルフ・ライエ星は、もともとは3つ目の超巨星よりも質量が大きかったとみられています。ただ質量の多くを失っており、現在は2つのウォルフ・ライエ星の質量は太陽の10〜20倍、超巨星の質量は太陽の40〜50倍だと考えられています。

こちらの映像は、ウェッブ望遠鏡のMIRIのデータに基づいて、4つの殻のうちの3つを立体的に視覚化したものです。最も大きな殻は、少なくとも差し渡し4.6光年あります。Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Simulation: Yinuo Han (Caltech), Ryan White (Macquarie University); Visualization: Christian Nieves (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI)

(参考)
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Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; Science: Yinuo Han (Caltech), Ryan White (Macquarie University); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI)

(参照)NASA