画像中央に大きく見えているのは、うお座の方向、約2億1500万光年の距離にある渦巻銀河NGC 105です。左上に見える銀河が、NGC 105と衝突しているように見えますが、これは二つの天体が地球から見て偶然同じ方向にあるためにそのように見えるだけで、実際に衝突しているわけではありません。画像はハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されました。
アストロピクスで先日紹介した渦巻銀河UGC 9391と同様に、NGC 105では「セファイド変光星(ケフェウス座δ型変光星)」と呼ばれる種類の変光星が発見されており、また「Ia型超新星」が観測されたことがあります。
セファイド変光星もIa型超新星も、その明るさを観測することで天体までの距離を測定するために使われます。Ia型超新星の方が、セファイド変光星に比べてより遠方の天体までの距離を測定することができます。NGC 105のように両方が観測された銀河は、2つの距離測定技術を互いに較正する機会を与えてくれます。
最近、NGC 105を含む銀河のサンプルを分析し、宇宙がどれくらいの速さで膨張しているのか(ハッブル定数)が求められました。その結果、広く受け入れられている宇宙論モデルの予測とは一致せず、この食い違いが測定誤差によって引き起こされる可能性はごくわずかであることが示されました。
銀河観測の結果と宇宙論モデルの予測との食い違いは、天文学者にとって長年にわたり悩みの種でした。今回の発見は、宇宙論の標準的な理論に何か誤りがあるか、何か不足しているものがあるとする説得力のある新たな証拠となったとのことです。
画像は2022年1月3日にリリースされた、ハッブル宇宙望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」です。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Jones, A. Riess et al. Acknowledgement: R. Colombari
(参照)ESA/Hubble